千百年以来、人類は病に襲われることを防ぐため、豊かな経験と知恵を累積してきました。伝統医学の文化遺産は、現代生活に深く影響を与えているだけではなく、一部分は国立故宮博物院の文物としても収蔵されています。殊に質も良く、量も豊富な医薬典籍は清代の宮廷で収蔵されていたもの、或いは朝廷の編纂による図書文献、更には清朝末期の学者が使節として日本に遣わされた期間、必死に収集した伝世の善本、及び本院が歴年購入、或いは各界より寄贈された古書などに分かれており、共に収集されたこれらの資料は学理とイノベーション応用を研鑽する上で貴重な資源となっております。
生、老、病、死は、あたかも四季の移り変わりのようです。女性が子を孕んだ後、胎児の発育、嬰児・幼児時期の成長は、既に新しい生命の旅程を象徴していますが、この後、一連の健康を守る戦いにも遭遇します。様々な疾患や病状に直面した時、異なる伝統医学をはじめ、宗教門派、文化体系、自らが納得する身体の動かし方などの思考パターンがあります。また人類社会は数千年の発展進化を経て、大小の疾病や疫病などに対応するため、代々多様且つ変化に富む治療法と処方を鍛えだし、その恩恵は無窮です。こうした知恵に基づいて、徐々に「既にかかった病は治さず未病を治す」、「食事療法で治せなければ、次に薬を使う」等、飲食によって疾病を予防するまでに発展したのです。更に一歩進んで、食事療法の補益効果で、寿命を延ばす養生哲学にまで到達しました。人命は千金に値します。学術思想の進展に加えて、国家を維持するための実際に必要な医事は、早くから歴代の法令制度のキーポイントであり、更に全体的な医療文化と技術の躍進をもたらしたのです。
この度の特別展は、本院所蔵の医薬に関連する古籍、檔案、法書、絵画、器物等、異なるタイプの文物を精選し、「人の始生」、「身体を透視」、「疾病に直面」、「外證治療」、「百草千金」、「宗教医療」、「養生延寿」および「医事制度」の八つのコーナーに分けて、伝統医学と身体・疾病・経典・信仰・制度間に於ける双方向の関係、及び日本や朝鮮等と周辺国家との交流の影響をまとめました。ご参観なさる皆様には、医療・養生の大千世界(ビッグワールド)をご理解頂き、その上で現代社会の生命と医療観を振り返り、長寿で健康、そして営々と続いてきた楽しみは尽きることがないことへの憧れと祝福をお伝えしたいと思います。