1940年代初め、葉公綽は張大千を激励して、芸術という分野では『道を切り拓いて独行』すべきで、それでこそ伝統絵画に新たな創造を与えるという重責を担うことができると言い、そうした励ましが最終的に張大千を敦煌壁画の模写へ向かわせることになりました。張大千は敦煌で2年7ヵ月もの間、積極的に学びながら276幅ほどの壁画を臨模し、宋元代の画風の制限を突破して、唐代と北朝の高古な趣にまで遡りました。それ以降、張大千の芸術思想や創作手法に大きな変化が生じます。仏像と人物画を重んじるようになり、線の表現に重きが置かれ、復古の勾染を追求し、精緻な表現が雄大に、簡潔な表現が緻密になり、女性の健康的な美を描くなどの変化が見られるようになりました。また、精麗でありながら雄健な画風を創出し、それまでになかった斬新な作品を発表しました。この度の特別展では、「摹釈迦説法図」や「摹楡林窟唐菩薩立像」、「摹宋代伎楽」などの人物画を展示します。生気溢れる滑らかな線の表現や、端正かつ重厚な色彩表現、豊かな精神性を備えた人物像をご覧ください。これらの佳作は古代壁画の神韻を再現しているのみならず、張大千がどのようにして古の趣を新たな表現へと進化させ、独自の道を切り拓いたかを示す作品でもあります。