巨匠の面影─張大千生誕120年記念特別展,展覧期間  2019.4.1-6.25,北部院区 第一展覧エリア 会場 202,204,206,208,210,212

 張大千(1899-1983)、四川内江の人。名は爰、字は季爰、別号は大千居士、斎名は大風堂。幼少の頃から母親の曽友貞(1861-1936)に絵画の手ほどきを受け、後に上海で曽熙(1861-1930)と李瑞清(1867-1920)に師事して書画や詩文を学びました。張大千の生涯は数々の伝説に彩られています。日本に留学して染織を学びましたが、僧侶として入寺し、その後は戦火の中、敦煌の莫高窟に赴いて壁画の模写に取り組みました。民国38年(1949)以降は海外に居を移し、アジアと欧州各国、米国で絵画展を開催するなど、国際的にも知名度の高い、20世紀を代表する中国画の大家です。民国65年(1976)以降は台湾に定住し、摩耶精舎で晩年を過ごしました。

 張大千の書芸は石涛(1642-1707)と八大山人(1626-1705)から大きな影響を受けていますが、隋唐、北魏にまで遡って絵画を学び、長年に渡って古代の名家に深く親しみつつ、伝統的な画技の精髄を会得し、山水画から人物画、花鳥画、畜獣画など、各種絵画の妙を極めました。古書画の研究にも熱心に取り組んだ張大千は、主だった鑑賞家の一人に数えられるほどになり、絵画史にも独自の見解を持つに至りました。晩年は気勢雄壮な溌墨溌彩を用いた画風を生み出して、水墨画に新たな境地を切り拓き、水墨画界を代表する象徴的な存在となりました。書法は各書体に通じ、様々な書風の臨模にも優れていました。それらを融合させた独創的で雄強、鮮明な書風が精妙な画風と相まって、互いにその美を際立たせています。六十数年もの長きに渡り画家として活躍し、創作に励んだ張大千の作品数は膨大な数に上り、貴重な文化遺産として残されています。

 張大千氏と国立故宮博物院は浅からぬ縁があり、没後にご遺族より張氏所蔵の書画作品や落款印に加えて、居所であった麻耶精舎も記念館としてご寄贈いただき、本院が管理することとなりました。張大千生誕120年記念となる本年、本院が大量に所蔵する作品のほか、国立歴史博物館の寄託作品から書画の名品や印章、貴重な写真などを選出して展示いたします。張大千の早期から中期、晩期の芸術的特色とその精神が具体的に反映された展示を通して、張大千の精彩を極める芸術と大家ならではの風格を改めてご覧ください。