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山水の清らな音

 早期の緙繍は実用品か装飾品が中心で、現在は破損した小片が残されているのみです。宋代以降の緙繍作品は当時の風俗文化や宗教、各時代の画風と密接な関わりがあります。宋徽宗(1082-1135)は宮廷に繍画専科を設置して、作品の種類を山水や楼閣、人物、花鳥などに分類しました。次第に緙繍は芸術性の高い貴重品になっていったのです。元代から明代以降の緙繍は絵画のようで、それぞれに特色があります。緙繍工芸家は糸を顔料とし、筆の代わりに針と梭を用いて、奇抜な構図や工夫を凝らした独特の色遣いで、聳え立つ高山や流れ行く川、登山や水遊びなど、絵の山水画と比べても遜色のない作品を描き出したのです。

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    • 伝 宋 沈子蕃緙絲秋山詩意 軸
    • 伝 宋 沈子蕃緙絲秋山詩意 軸
    伝 宋 沈子蕃緙絲秋山詩意 軸

    宋 沈子蕃緙絲秋山詩意 軸

     この作品は一河両岸構図となっている。前景には川を臨む崖上に佇む亭閣が描かれており、二人の士人が窓から風景を眺めている。この様式は元代以降の山水画に近く、製作年代に関しては議論の余地があるだろう。本院は緙絲山水の作品を3点収蔵している。「宋沈子蕃緙絲山水」(故絲00003)の構図は本作同様だが、着色が異なる。「宋緙絲山水」(故絲00007)は山や建物などの位置が左右反対になっている。

     本作の着色は温かく潤った感があり、物象の造形も明瞭で、織工の技巧が充分に表現されており、比較的早い時代に製作された作品と考えられる。

    • 伝 宋 緙絲山水 軸
    伝 宋 緙絲山水 軸

     宋 緙絲山水 軸

     この作品に表現されている風景は「宋沈子蕃緙絲秋山詩意」と同じだが、山や建物などの位置が左右反対になっており、緙絲最大の特色が見て取れる。つまり、裏と表が全く同じで、両面を画幅にできるという典型的な例である。

     本作の着色は比較的明るく、溌剌としている。この作品を手がけた職人はおそらく画芸についてよくわかっておらず、沈子蕃を模倣して、緯線(横糸)の向きに合わせて景物の形を織り出したようだが、山水の箇所に捻れが生じている。色調の転換にもやや突飛な感があり、緯線の色合いも非調和的で、折り目も緩く平淡になっている。人物の顔や篷舟、樹木の葉、幹の一部の輪郭は墨で描き足してある。

    • 宋 緙絲海屋添籌 軸
    宋 緙絲海屋添籌 軸

    宋 緙絲海屋添籌 軸

     緙絲で織り出された蓬莱の仙島、華麗な彫刻で彩られた楼台、天空を舞い飛ぶ仙鶴─神仙の住処が表現されている。画面は小さいが、織りの技術と色遣いが精彩を放っている。山石や楼閣、人物、動植物の全てが図案化されている。作風には飾り気がなく素朴な味わいがある。山石と人物の破損箇所は筆で描き足されている。

     『東坡志林』によれば、「三人の老人が出会い、年齢について問うた。その内の一人は『海が桑田になる度に籌碼(計算に使う道具)で記録したが、今ではもう十軒の家が籌碼でいっぱいになってしまったよ。』と答えた。」この故事から「海屋添籌」は長寿を祝う言葉となった。詩塘に元代の虞集(1272-1348)による至正甲申(1344)の題跋がある。

    • 清 孔憲培妻于氏 恭繡御製万年枝上日初長詩意 軸
    清 孔憲培妻于氏 恭繡御製万年枝上日初長詩意 軸

    清 孔憲培妻于氏 恭繡御製万年枝上日初長詩意 軸

     無地の綾に色とりどりの糸で絵図が刺繍されている。亭台や楼閣、中天に掛かる太陽、たなびく雲霧、霊芝や松、竹が四周に植えられている。中景の開けた場所に干支儀がある。時間と空間を示すのに使われた古代の道具で、符号的な意味合いもあり、作品の題名と詩意を伝えている。この作品の刺繍は独特の方法が用いられている。輪郭と輪郭の間は余白で水路が表現されており、立体的で奥行きが感じられる。全体の色遣いは明るく華やかで、絹糸の輝きに目を奪われる。刺繍の技術も精巧である。清乾隆朝(1736-11795)の名品と言える。

     孔憲培(1756-11793)、孔子の72代目の子孫にあたる。その妻の于氏(生没年不詳)は刺繍の名手だった。

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