メインコンテンツへ移動
:::

展示概要

 緙絲は簡素な木製織機で制作された平織りの織物です。その特色は「通経断緯」と言われる織り方で、まず先に経糸の面に模様を描き、画稿に合わせて必要な色の絹糸を杼に巻いて、図案を元に模様を描いた経線の間に杼を通して往復させます。図案の周囲に鋸状の隙間ができるために「刻絲」とも言われ、「無中に有を生ず」工芸とも喩えられます。刺繍は絹布や綾、絹紬、緞子などの絹織物に図案を描いてから、色とりどりの糸で模様を縫い込むので、「錦上添花」の作品と言えます。

 緙絲と刺繍には長い歴史があります。緙繡の制作技巧が成熟するにつれて、その芸術性を観賞して楽しむものになりました。特に宋代(960-1279)の工芸家は絵画から発想を得ることが多く、それが転じて名家の書画作品を臨模するようになりました。花鳥画や山水画、仏教、道教、故事を描いた作品など、その内容は多岐に渡り、多種多様な画作が緙繡で再現されましたが、細部の変化は絵画を超えるほどで、非凡な芸術の境地が表現されたのです。

 国立故宮博物院では質量ともに優れた緙繡作品を所蔵しています。この度の特別展では、緙繡山水や人物などの題材から作品を精選し、「山水の清らな音」、「仏教と道教の人物」、「故事の人物」、「名家の名作」などの主題に合わせた展示を行い、題材の内容や物象の配置、制作技法の面から緙絲と刺繍の特色や技芸の妙を解説します。このほか、宋元明以来の工芸家の創作から各作品の時代的風格や芸術上の成果についてもご紹介し、緙絲と刺繍の多元性をご覧いただきます。ご観覧の皆さまに緙繡工芸の美を堪能していただけるでしょう。

TOP