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帝后像に見られる「権力のかたち」

 皇帝と后は強大な権力を有していましたが、その面立ちからそれを知ることは難しいでしょう。しかし、肖像画の皇帝と后を見ると、立像であれ、坐像であれ、荘重な雰囲気や端正な容姿から、慎重かつ的確に物事を判断する能力が備わっているように見えます。落ち着きのある威容は帝后像に見られる「権力のかたち」の一つです。

 歴代帝后の装束は礼服や常服など、様々な種類がありますが、これらの服装はその身分を明らかにする最も直接的な方法です。帝后のみ着用が許された服飾も帝后像に見られる「権力のかたち」の一つです。

 巨大な権力は強大な消費力を伴うことが多く、豪奢な高級品の数々も高貴な身分の彩りとなっています。絢爛豪華の極み─これもまた帝后像に見られる「権力のかたち」の一つです。

 象徴的な符合を用いて、その身分を明らかにすることもできます。帝后が着ている袍服の太陽や月、星、龍などの紋章は、本来はその人徳や能力の高さへの期待と賞賛の意味が込められていたものですが、後に象徴的に権威を示す符号─権力のシンボルとなりました。これもまた帝后像に見られる「権力のかたち」の一つです。

 きめ細かな画絹に不純物が一切ない顔料で複雑細緻に色が重ねられています。これは素材と画工に費用を惜しまず、完璧な仕上がりを求めたことを示しています。最上級の材料と最高の画工─これもまた帝后像に見られる「権力のかたち」の一つです。

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    • 宋 馬麟 夏禹王立像
    宋 馬麟 夏禹王立像
    宋 馬麟 夏禹王立像
    • 国宝 2011年4月文化部により公告

     九旒冕を戴いた大禹。袍服は帝王のみ使用が許された「日」や「月」、「三星」などの紋章で彩られている。床まで垂れ下がった衣装の裾が広がり、圭を手にした大禹の姿がより細長く端正に見える。

     この絵は宮廷画家の馬麟(1180頃-1256以降)が、宋理宗(1205-1264)の「道統十三賛」を元に描いたもので、道統と政統合一という政治理念を示している。

    • 唐太宗立像
    唐太宗立像
    唐太宗立像

     3m近くある大作。見上げるようにしてようやく唐太宗(598-649)の顔を視界に収めることができる。巨大な体躯からは軽視しがたい威厳がにじみ出ている。唐太宗が身に付けた袍服を彩る団龍花紋は口に二つの鼻腔があり、明代の造形に近くなっている。この絵はおそらく他にもある同サイズの皇帝像と功臣像─明代に歴代皇帝と賢臣を祀るために描かれた一連の作品の一つであろう。それらの人物を敬うために、かつては全ての肖像画が掛けられていた。

    • 宋英宗坐像
    宋英宗坐像
    宋英宗坐像

     朱塗りの大きな御榻に腰を下ろした宋英宗(1032-1067)が描かれている。身に付けた淡い黄色の常服は、かなり質素なものに見える。しかし、赤い窄袖の内側は金糸を織り込んだ細密な団龍紋で埋め尽くされている。黒い靴の表面も丸い花模様で飾られており、慎ましやかだが、その仕立ての豪華さは隠しようもない。

     宋英宗は在位期間わずか4年で崩御した。この絵は宮廷画家が描いたものに違いなく、即位後間もない1063年から、その子である宋神宗が1069年に宋英宗の肖像画を景霊宮に奉納し、祭祀を執り行うまでの間に制作されたものであろう。

    • 明孝宗坐像
    明孝宗坐像
    明孝宗坐像
    • 重要古物 2019年6月文化部により公告

     明孝宗(1470-1505)の肖像画は朝堂で政務を行っている場面が描かれている。十二紋章の龍袍をまとった孝宗が、精緻な彫刻が施された宝座に腰掛けている。背後には高大な屏風が聳え、床には華麗な織物が敷いてあり、多数の龍紋に囲まれた皇帝が、象徴的な紋様の中に埋没しているかのように見える。

     この坐像は極めて完成度が高く、複雑を極める紋飾も精確に描かれており、随意に筆を揮って描かれた屏風の雲龍も生き生きとしている。15世紀末から16世紀初頭にかけての明代宮廷作品の卓越した水準が反映されている。

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