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時局下の景勝

 1949年以降、両岸三地が分立した政治情勢の下、実景山水画にそれまでとは異なる発展がありました。中共が建国後、20世紀中葉に「新国画」の概念が打ち出され、内容的には現実感を反映し、形式上は写実に近くあるべきとの主張がなされると、祖国を讃えるような内容の実景山水画が次第に数を増し、人民への奉仕という意味を持つようになりました。そして、国民政府に従って台湾に移住した画家たちは台湾各地を回って、台湾の風景を題材としました。その頃、中部横貫公路の修繕工事や阿里山の観光化が進められたほか、難所として知られる蘇花公路など、台湾の山海の絶景も山水画に描かれるようになったのです。返還以前の香港は両岸の折衝役を務め、香港を題材に作画する流寓の画家らも少なくありませんでした。緑滴る山々に囲まれた高層ビル群は、金融の要地とされる香港の象徴であり、香港特有の山水画になりました。

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  • 民国 銭厓 水光瀲灩

    • 形式:軸
    • サイズ:55x52.5 cm

     銭厓(1897-1967)、字は叔厓、号は痩鉄、号で知られた。江蘇省無錫市出身。近代の著名な書画家、篆刻家。

     西湖を描いた本作は1961年に制作された。前景に跨虹橋、後景に西泠橋と孤山、阮公墩、左側に保俶塔が描かれている。墨で随意に描き上げ、一点透視法で空間が形作られており、広大な雰囲気が増している。中国では1950年代以降、ソ連の社会主義リアリズムの影響を受けて「新国画」の呼び声が高まり、水墨画に透視図法を取り入れるのが大流行した。

  • 民国 黄君璧 谷関橋影

    • 形式:軸
    • サイズ:138.2x69.5 cm
    • 黄君璧氏寄贈

     黄君璧(1898-1991)、広東省仏山市南海出身。1949年に来台し、国立台湾師範大学美術系で教鞭を執った。近代書画の名家。

     台中市和平区に位置する谷関は、1960年に中部横貫公路が開通すると、温泉地として観光名所の一つとなった。この作品は第30回(1976)全省美展に出展された。鬱蒼と生い茂る草木が墨点を重ねて表現されている。これは「米点皴」を転化したものかもしれない。古画に吊橋が登場することはめったにないが、台湾の山地には吊橋が多く、それがこの絵の特色にもなっている。

  • 民国 林建同 獅子山下

    • 形式:軸
    • サイズ:70x44 cm
    • 林紀凱氏、林紀穂氏寄贈

     林建同(1911-1994)、広東省江門市新会出身。1949年以降は香港に定住。香港の著名な画家で美術教育者。

     1990年に制作された本作には、香港九龍半島の獅子山が描かれている。獅子の頭は西を向いており、頂上まで登ると、九龍と香港島が一望できる。1970年代から1990年代にかけて放送された「獅子山の下で」というテレビドラマでは、各地から香港にやって来た人々が逆境にも負けず、懸命に生きる姿が描写され、この「獅子山精神」が香港人の「本土意識」の象徴となった。その精神は近年香港で行われている社会運動によって甦った。

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