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風格と風景

 実景が画作の風格を決めるのでしょうか。それとも、画風自体が「眼前にあるかのような」感覚を生み出すのでしょうか。元代の呉鎮(1280-1354)が描いた「嘉禾八景」という作品には、意図的に簡略化した物象と大きく残した余白で、嘉興付近の景勝地8ヶ所─橋や渓流、塔や寺が雲霧の中に見え隠れする風景が描かれています。嶺南派の画家関山月(1912-2000)の「貴陽花谿図」には、複雑な筆致や連続性のある構図で貴陽市の花谿公園が描かれています。まるでその場にいるかのように、緩やかなカーブを描く渓流沿いに園内の風景が堪能できます。前者は宋代以来の「瀟湘八景」という様式を用いており、後者は西洋の遠近法を思わせる手法で空間が構築されています。実景を描く際、どの種の伝統的画風や様式を用いれば、より適切な描写が可能となるのでしょうか。

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  • 元 呉鎮 嘉禾八景

    • 形式:卷
    • サイズ:37.5x566 cm
    • 張維楨氏(羅家倫夫人)寄贈

     呉鎮(1280-1354)、字は仲圭、号は梅花道人、浙江嘉興(現在の浙江省嘉興市)の人。墨画に優れ、黄公望(1269-1354)、倪瓉(1301-1374)、王蒙(1308-1385)とともに元四家の一人に数えられた。

     至正4年(1344)に制作された本作は、北宋「瀟湘八景」の前例に倣い、嘉興(嘉禾とも言う)一帯の景勝地8箇所が描かれている。地名や建築物の名称も書いてあり、余白を使って各地を繋げ、相対的に配置している。簡潔な筆致に墨趣が溢れ、詩情豊かに悠遠な風景が描かれている。

  • 民国 関山月 貴陽花谿図

    • 形式:卷
    • サイズ:44.8x347.2 cm
    • 国防部移贈何応欽(敬之)将軍遺贈

     関山月(1912-2000)、本名は沢霈、広東省陽江市出身。嶺南派の宗師高剣父(1879-1951)の内弟子。高剣父の中西折衷の理念から大きな影響を受けた。

     1941年に制作された本作には、貴州省貴陽市にある花谿公園が描かれている。花渓大橋から始まり、鶴洲から麟山、亀山、鳳山、最後は壩上橋を過ぎて蛇山に至る。手巻なので、地図のように観覧ルートが描いてある。遠景には遠近法を用い、空間の広がりが現実的に表現されており、まるで自分がその場にいるかのように感じられる。

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