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身体を見つめる

身体に 関する解説や見解は分野によって大きく異なります。医学では身体内部の臓器の構造や経絡、ツボ、筋肉、神経などに、法医学では身体外部や口腔、骨格の説明に重きが置かれますが、宗教経典は身体に特殊な象徴的意味を与えることに焦点が当てられ、人体を宇宙の運行の縮図とする哲学的思想を掲げています。こちらのコーナーでは、『玄門脈訣内図』、『鍼灸資生経』、『理科掛図』、『東医宝鑑』、『律例館校正洗冤録』、『真禅内印頓証虚凝法界金剛智経』、『耆婆五臓経』のほか、『蔵医唐卡』などの書籍や絵図を展示します。医学や法医学、仏教、道教などの様々な観点から身体に関する解説をご紹介しつつ、古代文化において人間の身体が持つ多様な意味についてご覧いただきます。それにより過去2千年間における人々の身体に対する認識や、異文化間の交流と影響を垣間見ることができます。
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    作画者不詳
    「理科掛図」
    (民国8年〔1919〕2月2版上海商務印書館発行)
    故獻000001-000048

    人間 の身体について説明する際、内臓の構造や経絡、ツボの位置、気血などを記すのが中国伝統の記述法です。こちらのコーナーでは、全身の内臓や身体の部分、経脈、鍼灸とツボなどを含む身体の絵図を展示します。例えば、旧題によれば漢代の医者華佗(145頃-208)が著したとされる『玄門脈訣内照図』には、人体の正面と背面などの絵図があります。朝鮮の名医許浚(1546-1615)の著書『東医宝鑑』には五臓六腑図が掲載されています。また、南宋の医学者の著書『鍼灸資生経』には、ツボの位置と鍼の刺し方が紹介してあり、36幅のツボの位置図も付いています。しかし、清代末期になると、西洋科学の影響を受けて身体の描き方に変化が生じました。清末の新しいタイプの学堂で使われた教科書の補助教材──「理科掛図」の身体の描き方は伝統的なものとは異なり、骨格と筋肉、神経の描写が重視されています。

  • バチカンの医学的人体図

    1.人体の構造についての七つの書(De Humani Corporis Fabrica Libri Septem)
    アンドレアス・ヴェサリウス(Andreas Vesalius, 1514-1564)
    ©バチカン図書館 ©Biblioteca Apostolica Vaticana

    2.解剖研究(Studi Anatomici)
    ジュリオ・ボナソーネ(Giulio Bonasone, c. 1498- after 1574)
    ©バチカン図書館 ©Biblioteca Apostolica Vatican

    西洋でルネサンスが広まった時期の解剖学者アンドレアス・ヴェサリウス(Andreas Vesalius, 1514-1564)の著書『人体の構造についての七つの書(De Humani Corporis Fabrica Libri Septe)』には非常に細密な身体図の版画があり、それまでの人体構造に関する誤った論点を正した、近代人体解剖学の権威ある書物の一つです。バチカン図書館(Biblioteca Apostolica Vaticana)は本書に加え、イタリアの著名な版画家ジュリオ・ボナソーネ(Giulio Bonasone, c. 1498-1574)が絵を描いた「解剖研究(Studi Anatomici)」も所蔵しています。こちらのコーナーでは、『人体の構造についての七つの書』と「解剖研究」の一部画像を展示し、西洋におけるルネッサンス以降の身体描写法をご紹介し、本院所蔵の身体図と比較しつつ分析します。

  • 医学タンカ

    医学タンカの画像

    タンカ(唐卡)はチベット語で「Thang Kha」と言い、チベットの巻物に描かれた絵図を指します。タンカの画題は宗教や医学、天文、暦法、歴史的な出来事、神話、動物、植物…など多岐にわたります。今回展示する画像はその一部で、医学に関するタンカのものです。医学的なタンカはチベット語で「sman thang」と言い、中国語は「曼唐」または「門唐」と音訳されています。チベット族の伝統的医学には長い歴史があり、人体の健康と自然との関係を重んじ、人体の構造や人間の生理機能、病変と自然現象が緊密に結び付けられています。チベットの医学タンカは脈絡図と穴位図(ツボの位置)だけでなく、骨格図や人体各器官図、人体解剖図もあります。

    以上全て「文化部 モンゴル・チベット文化センター提供」

  • 法医学の身体観

    『律例館校正洗冤録』(清乾隆七年武英殿刊本)
    「検骨図」と「屍図」
    (宋)宋慈撰 (清)律例館校正
    故殿009475-009476

    中国の伝統的法医学(検験学)と伝統的中国医学は同じく人体に焦点を当てたものですが、両者の境界は人間の生死にあります。中国医学の身体図は生前の内臓と精気の循環に着目したもので、法医学は死後に注目し、身体外部や口腔、骨格の描写を重視しており、内蔵にはあまり触れていません。本展では、本院所蔵の『律例館校正洗冤録』に掲載の検骨図や屍図など、法医学の人体図を展示します。『洗冤録』は宋代の提刑官宋慈(1186-1249)が編纂した現存する最早期の、絶大な影響を与えた法医学の専門書です。乾隆帝(在位期間:1736-1795)は乾隆6年(1741)にこの書籍の校閲及び修訂を命じ、その翌年完成した修訂版を広く頒布しました。書名は『律例館校正洗冤録』に改められ、清代における検験学の標準的知識とされ、官員と仵作(現代の法医学者に相当する官吏)の必読書になりました。

  • 仏教と道教の身体観

    『耆婆五臓経』(天保4年相庭熙鈔本) 
    「黄庭秘図序」と「胎蔵界金剛界」
    (日本)編者不詳
    故觀014048

    どの宗教にも身体に対する独自の見解がありますが、それらの観点は宗教色が強く、象徴的な意味を持っています。道教では、身体の各部分はそれぞれ別の神が司ると考えられています。本展では明朝の文献学者王圻(1530-1615)と、その息子の王思義(生没年不詳)が編纂した『三才図会』を展示します。この書籍には肝神や心神、脾神、肺神、腎神など、体内に宿る神のイメージが絵図に描かれています。このほか、紀元前6世紀の名医耆婆(ギバ,生没年不詳)の名を借りて編纂された『耆婆五臓経』には、着色された手描きの人体図が多数あり、五臓が宗教的な象徴性をもって描写されています。これらの絵図は実際の臓器が描かれているわけではなく、一種の宗教的な人体構造図です。『真禅内印頓証虚凝法界金剛智経』には、仏教の密教と道教で用いる符籙の意義を結び付けた、衆生原形図と玉兎日月女身図があり、人体図に関して宗教による多様な解釈が見られます。

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