文物紹介
方形の器身。口にぴったりとはまる蓋が付いている。蓋には方形のつまみが付いているが、欠損箇所が多い。器身の前後両側に方形の注ぎ口と持ち手が付いている。底に高台があり、白く塗られた中心に青で書かれた「康熙御製」4文字の款があり、その周りに二重線の方形枠がある。蓋には月季(バラ科の植物)と菊、水仙が描かれており、器身の4面には牡丹や蓮、秋葵、梅の花など、四季の花々で装飾されている。器表は焼成後に自然に生じる微かな光沢を放っている。成型技法からこの方壺が宜興産であることがわかり、底の「康熙御製」という款識に関連付けると、この作品もその他の康熙朝画琺瑯器と同様、「御製」の流れを汲んでおり、器体が完成してから清宮廷の工房に送られ、そこで紋飾が描かれたのである。この作品に付けられた「列」字の収蔵番号から、もともとは乾清宮に陳列されていたものだと知れる。また、清室善後委員会が編集した『故宮物品点査報告』と、道光年間の『琺瑯玻璃宜興磁胎陳設档案』に登録された記録から、乾隆3年(1738)に皇帝が主導して行われた、文物を専用の匣に収納する計画にまで遡ることができ、この作品はその一番初めの目録にある「宜興四方画琺瑯四季茶壺一件」であることがわかる。本作と木匣(伝世品は存在せず)は、乾隆帝が収蔵した康雍乾三朝琺瑯器の中で、最早期の例とすることができる。