文物紹介
大型で重厚な青花天球瓶。蓮の花の間を縫うようにして進む、雄々しい三つ爪の龍が器身全体に描かれている。全体に堂々たる風格と荘重な雰囲気が漂う。国立故宮博物院が所蔵する永楽青花磁器の名品である。この天球瓶の素地は肌理が細かく、釉は艶やかな潤いがある。口はやや外側に開いており、直線的な首、丸い鼓のような胴、平らな底には僅かなへこみがあり、高台はない。三つ爪の龍が、後ろを振り向きながら蓮の間を進む様子が、瓶全体に描かれている。口を大きく開けた龍は舌を伸ばし、牙をむき出して目を大きく見開き、爪を開いて闊歩している。全身が硬い鱗に覆われた龍は雄壮で力強い。首と背景の隙間には、蓮の花と枝葉が描かれている。青花の色は濃厚で美しく、絵の線も滑らかで、当時の製磁工芸の極めて高度な技術が見て取れる。永楽から宣徳年間にかけては、天球瓶や扁壺などの青花大型器が制作されることがあった。青花磁器は酸化コバルトという鉱物を顔料として用い、素地に紋飾を描いてから透明釉を一度かけ、摂氏1200度ほどの高温で焼造した作品である。明代永楽から宣徳年間の青花磁器は青花の発色が濃厚で色鮮やかな上、「鉄錆斑」があり、独特の鮮明な風格が見られる。また、清朝早期に永楽宣徳青花古磁器の模造品を制作した際、重点的に模倣された作品でもある。