覚翁書画─傅狷夫氏ご遺族による寄贈作品特別展,展覧期間 2017/1/25~2017/4/25,北部院区 第一展覧エリア 105、107
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神契海嶽─水墨の新境地

 傅狷夫は実景描写の新しい技法を研究する一方で、水墨によるイメージの創造にも関心を寄せ、とりわけ墨の用い方に得るものがありました。水墨の交わりや透明感のある視覚効果は米芾(1051-1107)が描いた雲山のイメージの理解から生じたものです。この度の特別展で展示する「神契海嶽」は墨が調和的に溶け合い、米点の形からも脱却して、「皴」の代わりに「染」が徐々に増えています。よく知られている傅家山水とはまた別の趣があります。

 「秋林流泉」という作品は渓流に波紋が描かれており、この分野の作品の過渡期であるのが見て取れます。同時期の作品に「老松風湍」など、詳細に描写された作品のほか、「万竿煙雨」や「秋江双帆」、「川東所見」など、朦朧としたもやが立ち込める風景を描いた作品もあり、物象そのものの形の写生からはほぼ脱却し、抽象的な意味合いが感じられます。「暮雨泊舟」は大筆を大胆に揮い、暗鬱とした空の色と湿った山石が巧みに捉えられており、艶やかで透明感のある墨色、画面の奥行きの深さなど、最も精彩な表現が見られます。

神契海嶽

  1. 民國 傅狷夫 1963年
  2. 形式:單片
  3. 32.4x59.4 cm

 「海岳」とは北宋の文人米芾の号である。傅狷夫の作品に見られる水墨の融合や透明感ある表現は、米芾の作中にその端緒がうかがえる。

  

神契海嶽

秋江双帆

  1. 民國 傅狷夫 1975年
  2. 形式:單片
  3. 27.5x69 cm

 彩墨を塗り重ねて描かれたこの作品は、物象そのものの形状から脱却し、抽象的な意味合いが感じられる。

秋江双帆

暮雨泊舟

  1. 民國 傅狷夫
  2. 形式:軸
  3. 90x44.4 cm

 大筆を揮いつつ陰鬱な空の色や湿った山石が巧みに捉えられている。艶やかで透明感のある墨韻、画面に奥行きも感じられ、精彩に富んだ作品となっている。



暮雨泊舟