覚翁書画─傅狷夫氏ご遺族による寄贈作品特別展,展覧期間 2017/1/25~2017/4/25,北部院区 第一展覧エリア 105、107
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山水台湾─台湾の風景

 盛年期を迎えると、台湾の山水の風景に大きく啓発されて、傅狷夫の画風は再び変化します。1949年に上海から船で台湾にやって着た傅狷夫は、この時初めて「水深於黛、浪起如山」(深く青黒い海、山のように盛り上がる波)と形容した大海原を目にします。その後、しばしば宜蘭県の大里へ行っては波の動きを観察し、逆巻く波のうねりを「点漬法」で表現するに至りました。このほか、横貫公路には3度足を運び、阿里山にも2度登り、「裂罅皴」で描く断崖絶壁、「染漬法」による壮大な雲海を創出しました。これにより水墨画による表現の可能性が一新されたのです。傅狷夫が提起した「写生」と、大自然の躍動する光陰を伝統的な筆墨で捉えた画法は、水墨画変革の道を指し示すことにもなり、その足跡を辿った者は数知れず、極めて大きな影響を与えました。 この度の特別展では、台湾の代表的な名勝の風景画のほか、山々に囲まれた地方の景色や、素朴な農村を描いた作品も展示いたします。このほか、「雲煙窟」や「海浜一角」などは、実際の風景を描いた作品ではありませんが、台湾の風景を元に創作された絵です。「雲水双絶、裂罅無儔」という賛辞はこれらの作品に端を発しています。

郊遊記事

  1. 民國 傅狷夫 1955年
  2. 形式:軸
  3. 29×60 cm

 傅狷夫は来台後、まず南港に居を構えた。家屋や付近の眺めなど、当時の素朴な風景が画中に残されている。

郊遊記事

祝山雲海

  1. 民國 傅狷夫 1960年
  2. 形式:軸
  3. 57x40 cm

 祝山は阿里山山脈に連なる山の一つで、日の出と雲海の絶景で知られる名所である。この作品は、たゆたい揺れ動く雲海が変化を繰り返しているように見える。

祝山雲海

対高嶽

  1. 民國 傅狷夫 1970年
  2. 形式:軸
  3. 181.4x89 cm

 対高嶽は阿里山山脈に連なる山の一つである。「新高山」(台湾最高峰の玉山)の正面に位置していることからこの名がある。この作品の山々は「裂罅皴」(陶器に入った亀裂のような線で表現する皴法)で描かれており、渲染(ぼかし)に擦筆が加えられ、雲霧たゆたう朦朧とした美が表現されている。

対高嶽

海浜一角

  1. 民國 傅狷夫 1988年
  2. 形式:軸
  3. 183.8x95 cm

 作者の想像による風景が「裂罅皴」と「点漬法」を用いて描かれている。渲染の間に波と岩石の境界が溶け込んでいるように見える。



海浜一角