動乱の時代の唱和
元代江南の士人たちは頻繁に交流を重ね、かなり複雑な人間関係が形成されていました。雅集出席者の身分も様々で、文士や僧侶、道士のほか、非漢民族(色目人)も参加していました。親しい友人同士の小規模な集まりはもちろん、十数人が集う宴会でも、この時代は宴の記念を残すことに積極的で、皆で観覧した作品に題跋を書いたりしたほか、宴席で唱和した詩句をまとめて出版することもありました。顧瑛(1310-1369)が編集した『玉山名勝集』と『草堂雅集』、『玉山記遊』は、数十回も開催した雅集での唱和をまとめた出版物です。当時、宴会での唱和は刹那の出来事でしかなく、記念品が持つ永遠性に特別な思いがあったのかもしれず、そうした品々を強調することで、思い出を紡ぎ過去を偲ぶ媒体にできたのでしょう。