档案は政府の職務遂行により形成される文書であるばかりでなく、国の政務推進や法規制定の過程を考察するための重要な拠り所となります。档案は参考や照合の価値を備えていることから、秦が国を統一する以前より、中国の各歴代王朝は国の档案を保管する完全な制度を確立させてきました。『史記』の記載には、すでに西周の成王が政府の重要な档案を金の櫃に保管するよう命じたとあり、档案の保存には実に三千年以上の長い歴史があることがわかります。このような制度は歴代継承され、後世に豊富な史料を残すことになりました。
政府の档案は高い機密性を有するため、外部の目に触れることはほとんどありませんでした。本博物院が所蔵する档案には、政府部門間でやりとりされた各種文書、官員の履歴や伝記、政府が編纂した歴朝の実録、皇帝の言動や生活を記録した起居注冊、聖訓、法令制度を記した会典などがあります。国の重要な政務にかかわる内容のため、清朝政府はこれらの档案に封をして慎重に保管していました。清朝は満州族により建国された王朝ですが、档案の管理と保存は前朝の制度を蹈襲し、档案の登録、謄写、修繕、照合、分類保存などにはすべて明文化した規定がありました。例えば国の最高機密を扱っていた軍機処では、対処すべき档案や帳簿も大量に上り、これらの档案は長期間繰り返し閲覧され傷んでしまうため、必ず数年ごとに修繕されていました。このように、清朝政府が国の档案の管理、保護、保存において極めて慎重であったことがうかがえます。
この度の展覧は「清代歴史文書精選」と題し、宮廷の奥深くに保管されてきた皇帝の詔書をはじめ、官員が皇帝に進上した奏摺、名臣の伝記、档案に添えられた冊子や図などを公開します。これらの貴重な史料を通じ、清代における文書の発展や形式、清王朝の政治秘話、君臣関係、政治・経済・文化、そして朝廷の盛衰を知ることができるでしょう。また、清朝は中国大陸の南東沿海に位置する台湾に対しても、その地方政務、世情や民の苦しみに関心を寄せていたことから、台湾に関する政府の文献、奏摺、地図、地誌などの史料も数多く残っています。本博物院はこの中から選りすぐりの史料を特設コーナーに展示し、清朝が二百余年にわたり台湾に寄せてきた関心を、文献に登場する人物、土地、事物などを通してご紹介します。