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如真呈覧

郎世寧(ジュゼッペ・カスティリオーネ/Giuseppe Castiglione)は皇帝の命を受け、蒙古の王侯貴族や藩属国から献上された貴重な鷹や犬、駿馬などを絵にしました。大型の作品は雄壮で圧倒的な迫力があります。「画十駿図雪点鵰」と「画十駿図如意驄」、「画愛烏罕四駿」の3作には、御製詩による記事があり、漢語と満州語、モンゴル語で命名されています。この種の主題は清朝と藩属国の間の交流を示しており、遠方の属国を懐柔しつつ、清朝の国力と強大さを賛美しています。郎世寧と宮廷画家による合作もあります。「画錦春図」や「画孔雀開屏」、「白鶻図」、「画交阯果然」などの造型は実に生き生きとしています。美しく整った線は滑らかで、細緻な着色も真に迫っており、その写生力が十分に発揮されています。このような作品は雍正時代から乾隆時代に突出しており、中西宮廷画家が互いに学び、画風を融合させた時代の特徴だと言えます。

画錦春図

清 郎世寧

画錦春図

  1. 軸 絹本着色
  2. 縱169.2cm 橫95.2cm

花盛りを迎えたホンカイドウと、水辺のの湖石で羽根を休めるつがいのキンケイが描かれている。色鮮やかな花々、珍しい鳥、霊芝、竹などは、いずれも吉祥長寿の象徴である。キンケイの艶やかな色彩は豊かで美しく、高所から差し込む白い光で鮮やかな色が更に際立って見える。羽根の光沢まで巧みに表現されているが、地面に影はない。ホンカイドウと霊芝も明暗の変化が描写され、丁寧に着色されているが、山石と斜面には中国伝統の技法が用いられている。背景まで丁寧に処理され、湖石の後ろに生えるホンカイドウと竹が穴から見える様子まで描かれている。この作品の構図は「万寿長春」よりも複雑で、山石と斜面も植物や鳥に合わせた単なる背景に留まってはいない。

画孔雀開屏 軸

清 郎世寧

画孔雀開屏 軸

  1. 軸 絹本着色
  2. 縱328cm 橫282cm

クジャクの雄には丸く広げられる尾羽があり、5年ほどで2、3mの長さになるという。普段は畳んであるが、大きく開くと鮮やかな色合いが美しい。この作品には、皇家の庭園の風景が描かれている。青緑色の畳石(層状の岩石)が置いてあり、その傍らにハクモクレンやボタン、ホンカイドウが植えられている。これには「玉堂冨貴」の寓意が込められている。

乾隆23年(1758)6月、西域のハミ(クルム市)からクジャクが献上された。乾隆帝は「孔雀開屏」という御製詩を詠み、画上に記した。同年7月12日の『活計档・如意館』には、「郎世寧が羽根を開いた孔雀の大作を一幅描き、方琮と金廷標が背景を合作した。白絹を用いた。」との記述がある。乾隆帝はこの作品制作に非常に具体的な指示を出しており、正しく「中西合作」が成功した傑作だと言えよう。

画十駿図 如意驄 軸

清 郎世寧

画十駿図 如意驄 軸

  1. 軸 絹本着色
  2. 縱230.5cm 橫297cm

天山以北のイリ地区に位置する準噶爾部(ジュンガル)はオイラトモンゴルの一部落を指す。乾隆8年(1743)に台吉噶爾旦策凌より良馬が献上された。乾隆帝はその馬の習性や毛色を見て「如意驄」と命名し、郎世寧に命じて馬の姿を巨幅に描かせた。題賛は翰林官員に書かせ、漢語と満州語、モンゴル語で馬の名前と体高、来歴も合わせて記された。画上には乾隆13年(1748)の御題詩もある。郎世寧は見事な西洋技法により藩部より献上された高大な駿馬を描写しており、こうした史実が記録された意義は大きい。

画十駿犬茹黄豹

清 郎世寧

画十駿犬茹黄豹

  1. 軸 絹本着色
  2. 縱247.5cm 橫163.7cm

乾隆12年(1747)、郎世寧は乾隆帝の命を受けて「十駿十狗」十幅を描いたという。これはおそらく本院所蔵の「十駿犬」十軸だと思われる。この作品は特定の犬の姿を絵にしたもので、犬の名と進呈者名が漢語と満州語、モンゴル語で記されている。犬の描写は極めて丁寧に、背景はやや写意的に描かれている点などから、郎世寧が犬を描き、他の画家が背景を手がけたものと思われる。その中の一幅「茹黄豹」は侍郎三和(?-1773)により献上された犬で、後ろを振り向きながら樹上でにぎやかにさえずるカササギを見つめている。その傍らに咲くザクロと菊の花が画面を彩るアクセントになっている。犬の眼差しは温かく穏やかで、毛の光沢もまるで生きているかのように描写されている。「茹黄」は古代の名犬の名で、この犬の毛色に合わせた名となっている。

画交阯果然 軸

清 郎世寧

画交阯果然 軸

  1. 軸 絹本着色
  2. 縱109.8cm 橫84.7cm

桃の木に登るワオキツネザルが描かれている。薄紅色の桃の花が彩る枝には、大きな蟠桃(ばんとう)が七つ実っている。郎世寧は薄墨を用いた細く短い線で明暗と深さ浅による色の変化を表現しつつ、白と黒が混じる毛のふっくらと柔らな質感を描写している。その造型は的確で真に迫ったものとなっている。背景の山石の表面は斧劈皴(画技の一種)を用い、青緑で渲染(ぼかし)を施し、ごく小さな墨点を加えている。この背景は宮廷画家の金廷標(18世紀に活動)により描かれた。画上に同じく勅命を受けた于敏中(1714-1779)による「御題交阯果然詩」がある。制作年の辛巳(乾隆20年/1761)は、孝聖憲皇后(1692-1777)が70歳を迎えた年であることから、皇太后の誕生日を祝うために制作された作品だと思われる。

画海西知時草 軸

清 郎世寧

画海西知時草 軸

  1. 軸 紙本着色
  2. 縱136.6cm 橫88.6cm

オジギソウは南アメリカ原産で、毛で覆われた茎に鋭い棘が生えている。夏から秋にかけて、ピンク色の丸い花を咲かせる。葉はわずかな刺激にも敏感に反応し、軽く触れただけで閉じて垂れ下がる。画上に書された乾隆18年(1753)の御製詩「題知時草六韻」には、この植物が西洋の宣教師から献上され、宮中の庭園に植えられたこと、乾隆帝が郎世寧に命じて絵画として記録させたことが記されている。構図は鉢植えが一つのみで背景は一切なく、オジギソウは西洋の画法で描かれている。写生図譜に近く、史実の記録と観賞用を兼ねている。大型磁器の鉢には青花の鮮やかな模様がある。木製の台座の脚は内向きで回字形になっている。磁器と木製台座の色合いに微妙な明暗の変化が見られ、立体感がある。

画白鷹 軸

清 郎世寧

画白鷹 軸

  1. 軸 絹本着色
  2. 縱179.9cm 橫99.2cm

宮中で飼育されている鷹が止まり台で羽根を休めている。羽根の色は純白で、頭と背、翼に灰色がかった褐色の模様が入っている。鷹が爪を傷つけないように、赤い止まり木に柔らかな皮が敷かれている。簾と錦織の布が掛けられ、鷹を繋ぐ柔らかい紐が台座に絡まないようにしてある。画中の止まり台は詳細に描かれているが、郎世寧の手によるものではない。同年正月の造辦処档案によれば、宮廷画家の姚文瀚(1743頃-1774頃に活動)が止まり台上の鷹と簾、錦織を描いたと記録されている。

乾隆30年(1765)、モンゴルの喀爾喀貝勒阿約爾より白鷹が献上された。その鷹を描いたこの絵は郎世寧が署款した最晩年の作品で、77歳だった。その翌年(1766)、郎世寧は北京で病没した。

琺瑯彩磁錦堂富貴碗

清 雍正

琺瑯彩磁錦堂富貴碗

  1. 高6.8cm 口徑14.6cm 底徑6cm

大きく開いた口、丸みのある深さい見込み、低い高台。全体に白い釉が施され、内側は純白の無紋である。外側の大部分に青い奇石と桃色や紫、白、黄色の牡丹が描かれている。その中に2羽のキンケイの姿も見え、1羽は真っ直ぐ前を向き、もう1羽は首を縮めて何かをじっと見つめている。半分に満たないスペースに墨で書かれた題「嫩蕊包金粉、重葩結繡雲」がある。引首に赤い「佳麗」の印があり、句末に「金成」と「旭映」─二つの印がある。底に青の宋体4文字の落款「雍正年製」があり、周囲は二重線で囲まれている。この碗は一対が伝えられている。道光15年の『琺瑯玻璃宜興磁胎陳設档案』(1835)に「磁胎画琺瑯錦春富貴白地宮碗一対」と登録されており、もう一つは北京故宮博物院に収蔵されている。この碗の色遣いやキンケイの描き方は、郎世寧の「画錦春図」とよく似ている。磁器の装飾模様と画院の題材が相互に関連していたことを示している。

青磁犬

清18世紀

青磁犬

  1. 長11.8cm

小さな猟犬が伏せている。大きく開いた両目、尾はくるりと丸まっている。全体にたっぷりと施された青釉は艶やかで透明感がある。釉の表面にごく小さな灰色の染みや茶色のひび割れがある。足の裏に丸い点状の支釘痕が残されている。共に伝わる木製の台座は、芭蕉の葉2枚が重なったデザインで、扁平な猟犬がぴったり収まるようになっている。犬の背にうっすらと見える背骨は、製作者が犬の身体の作りや特徴を意図して表現したことを伝えている。乾隆23年(1758)に多数の馬や羊、犬の装飾品が陳列され、乾隆25年(1760)には複数の西洋犬や猫、オウムなどが水法殿に陳列されたとの記録があり、この作品との時代的繋がりがわかる。全体的に郎世寧の「画十駿犬」の一幅「驀空鵲」にやや似ており、18世紀の「像生磁」制作と西洋人宣教師との間に関わりがある可能性を示している。

「十駿犬」の一幅「蒼水虬」に描かれた犬が機敏に左を振り返る姿と、フランスの装飾芸術美術館(Musée des Arts Décoratifs)所蔵の首を伸ばして右を見る猟犬の装飾模様が興味深さい対比をなしている。その作品は1745年に制作されており、「十駿犬」の制作年代と近く、郎世寧が「十駿犬」というモチーフを手がけた際に、当時、西洋で流行していた表現を取り入れた可能性もある。この青磁犬もそうした西洋文化の影響を受けたものとして理解できよう。

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