:::

図成百駿

郎世寧(ジュゼッペ・カスティリオーネ/Giuseppe Castiglione)が雍正時代に制作した絵画には十分な成果が見られます。「百駿図」はこの時期を代表するに足る大作だと言え、山水の風景と岸辺で放牧中の駿馬百頭が長巻に描かれています。画中の駿馬は姿形も動きもそれぞれ違い、静かに憩う馬もいれば、活発に駆け回っている馬もいて、駿馬百頭の変化に富んだ姿が見られます。


巻頭は画面の上下を貫くように描かれた2株の松から始まります。長さ8m近くある横幅の画面が巧みに生かされ、平坦な地面とほぼ同じ高さに視点が置かれています。平原での放牧風景、木々の間に散らばる馬、川岸で水浴びをする馬、川を渡らされる馬などの段落に分けられ、最後は遥か遠くに広がる山河の景色で終わります。全体に雄壮広大な雰囲気のある放牧風景で構成されています。清朝宮廷内務府档案には、雍正2年(1724)3月に、郎世寧が百駿図一巻の制作を命じられたとの記録があり、制作の経緯を示す文献の一つとして挙げられます。宮廷画院での作画はかなり複雑な過程を経なければならず、まず先に草稿を皇帝のご覧に入れ、了承を得てから作画が始められました。この度の特別展では、米国メトロポリタン博物館所蔵の「百駿図稿本」(草稿)も合わせて展示されます。この稿本の構図は本院所蔵の「百駿図」と等しく、清代宮廷画院の作画手順やシステムを理解する上で、最良の実例としてご覧いただけます。

百駿図

清 郎世寧

百駿図

  1. 卷 絹本着色
  2. 縱94.5cm 橫776cm

雍正6年(1728)に制作された作品。山水を背景に、様々な動きを見せる駿馬百頭が横幅に描かれており、壮大な放牧風景となっている。背景の地平線が画面の三分の二ほどの高さにあり、横方向に地面が続いて行くように見える。大小異なる植物や、平遠に見える空間によって奥行きが表現されている。伝統的な中国画の技法とは違い、明暗の変化を示す濃い色面で立体感が表現され、光と影の変化も意図的に表されている。馬の身体は輪郭線で描かれているが、色面で立体的に表現されている箇所がかなり多い。物象の陰影を意図的に調整することによって馬のリアルな姿を描き出してはいるが、強烈な明暗の対比は見られない。この作品には、郎世寧が2種類の画風を積極的に融和させようとした結果生じた中西折衷的な効果が見られる。

贊助單位