文物紹介
掐絲琺瑯鳧尊は鴨に似ている。長い首に短い嘴、短い足には水かきが付いており、扇のように広げた尾羽を持ち上げている。胴と合体している瓶には持ち手があり、『西清古鑑』巻九「周鳧尊二」の造形を忠実に表現しているが、その比率と輪郭はどこか拙さを感じさせ、一層の面白味がある。器身前後にある獣面紋の装飾や、翼の羽根の色合いは鮮やかで美しく、拙い表現の中に高度な技術が見える。古雅な趣を湛えながら荘重さも失われておらず、錯金銀銅器とは全く異なる美感が表現されており、乾隆朝宮廷の芸術性が充分に伝わってくる。