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構図の妙趣

画家は画中の物象を巧みに配置して、調和の取れた画面を構成します。これを「構図」と言います。南北朝の謝赫著『古画品録』にある「絵画六法」理論中の「経営位置」のことです。花鳥作品の構図は「全景構図」と「小景構図」の2種に分けられます。前者は平遠、または深遠な風景の内に、自然界に存在する花鳥の姿を表現します。後者はクローズアップで主題を突出させ、時には虚実の対比によって情趣豊かな画境や詩意をかもし出します。この2種の作品は構想も目指すイメージも異なりますが、どちらも生き生きとして、味わい深い作品です。

明呂紀秋渚水禽(New Window)

明呂紀秋渚水禽

宋緙絲芙蓉双雁(New Window)

宋緙絲芙蓉双雁

呂紀(1439頃-1505)、浙江鄞県(現在の浙江省寧波市)の人。「明呂紀秋渚水禽」には豆雁(ヒシクイ)の群れが描かれている。夜間に見張り役をするオスが一羽、月に向かって鳴いている。朦朧とした風景の中、雲霧による陰影が生じ、静謐さを湛える秋夜の風情がかもし出されている。「宋緙絲芙蓉双雁」は淡い青地の着色織である。湖岸に二羽の雁がいる。その傍らには芙蓉や葦草が生い茂り、空には雲彩が浮かぶ。織りは緊密で、グラデーションも丁寧に表現されている。

この二幅はどちらも全景構図である。呂紀の画法は「勾勒」と「没骨」を融合させたもので、鳥類や花卉の様子や雰囲気を見事に捉えている。緙絲の雁の羽毛や波紋はやや図案化されており、叙情性と装飾性が対比をなしている。

無款の花鳥画(New Window)

無款の花鳥画

明織山茶翠鳥(New Window)

明織山茶翠鳥

二作とも茶花(ツバキ)と山鳥が描かれている。花をつけた枝が右下へ伸び、「~型」の構図となっている。交錯する枝と花の様子、身体をねじって横を向く山雀(アオガラ)を見ると、同じ下絵を元にしたように思われる。「無款の花鳥」は茶花の枝にとまる山鳥が描かれている。鮮麗細緻な着色が施され、翻り裏返る花と葉の濃淡の変化もごく自然に表現されている。山鳥の羽毛も丹念に細かく描かれている。

「山茶翠鳥」は白地に茶花と山鳥が描かれている。熟練の技術が冴える織物で、織目も緊密に整っている。鳥の頭は数種類の色糸を撚り合わせて織られており、色の違いがうまく表現され、自然で生き生きとしている。