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花鳥と寓意

『宣和画譜』の「花鳥叙論」には、「詩人は六義により、鳥獣草木の名をよく知り、四季を通して自然界の様々な変化を記す。絵画の妙もそこから情趣が表現され、詩人と相表裏するものである。」とあり、画家が大自然の造化の妙を詠嘆する際、詩人と同じように「比」と「興」の手法を採ることもできるとしています。例えば、牡丹は富貴の象徴であり、芙蓉は語呂合わせで栄華を表します。また、絵画で心情を表すだけでなく、教化や戒め、時の政権への風刺をすることもあります。例えば、「明 呂紀 寒雪山鶏」には凍てつくような寒さの中、頭を上げてうずくまる一羽の雉雞(コウライキジ)が描かれており、逆境にあっても毅然とする文人の心境が鳥の姿に託して表現されています。「白鷹」の猛々しい表情は古くから瑞祥とされ、高潔な精神も表します。

宋緙絲孔雀(New Window)

宋緙絲孔雀

明呂紀杏花孔雀(New Window)

明呂紀杏花孔雀

孔雀が鮮やかな尾羽を広げた時の美しさは圧倒的である。「雀」と「爵」、同音の語呂合わせで出世や昇進の意も添えられている。この二幅の孔雀はゆっくりと歩きながら互いに見つめあっている。華麗な尾羽に目を奪われる。

呂紀(1429頃-1505)は工筆と写生を融合させ、両者のよさを生かした作品を残した。「杏花孔雀」は明るく細緻な色遣いで、優雅な中にもにぎわいが感じられる。

宋緙絲孔雀無地に五彩織で織り出された二羽の孔雀が、広げた尾羽を互いに重ねている。背景の余白と写実的表現によって、孔雀がより一層生き生きとして見える。織りは精巧緻密で奥行きもある。宋代緙絲の名品だと言える。

宋繡白鷹(New Window)

宋繡白鷹

白い絹布に刺繍された白鷹。羽根は白い刺繍糸を使った「平針法」によるもので、羽根の流れに沿って段階的に刺繍してある。刺繍糸と運針の方向が異なるため、光が反射して様々な効果が生じ、羽毛の自然な光沢がよく表現されている。白鷹がとまる台は平針で刺繍してから、金色の糸で模様や輪郭が取られている。房つきの紐は太い糸を配してから縫い付けてあり、写実的な表現となっている。全体にかなりの糸が抜け落ち、鷹の嘴や足の爪は下地の糸が見えてしまっているが、鷹の獰猛さは失われていない。この作品は太さの違う刺繍糸が用いられているが、精細な刺繍は平らに仕上がっている。全体に趣深く静けさが漂う。