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装飾の美

花鳥をモチーフにした作品の中では「鋪殿花」が最も特徴的です。北宋時代の郭若虚著『図画見聞志』には、「江南の徐熙は縑素(書画用の絹布)に草花や積み重なる岩石を描き、そこに薬草などを添え、鳥類や昆虫の美も取り混ぜている。南唐最後の君主李煜の宮廷用装飾品として供されたもので、『鋪殿花』と言われる。」と記されています。「鋪殿花」という様式で制作された作品が、華やかな宮廷の装飾品だったことがわかります。この種の作品は複雑に交わり生い茂る植物で画面が埋め尽くされています。奥行きがなく圧縮されたように見える、極めて装飾的な作品です。繊細かつ丹念な筆致と豊かな色彩が画面により華やかな美しさを添えています。

宋繡菊花簾(一)(New Window)

宋繡菊花簾(一)

伝五代南唐徐熙玉堂富貴図(New Window)

五代南唐徐熙玉堂富貴図

宋緙絲富貴長春(New Window)

宋緙絲富貴長春

「五代南唐 徐熙 玉堂富貴圖」と伝えられるこの作品には、玉蘭や海棠、牡丹などが描かれており、豊かで華やかな雰囲気に満ちている。庭石の傍らを錦鶏(キンケイ)が漫歩している。ともに双鉤填彩で描かれた花々と鳥は精緻かつ秀麗である。徐熙(10世紀初頭に活動)は南唐の著名な花鳥画家である。「宋繡菊花簾」には鉢に植えられた満開の菊が描かれている。大輪の菊が咲き誇る様子は、図案のような装飾的美しさがある。

「宋緙絲富貴長春」は青地の五彩織で、牡丹を中心に薔薇や菊、芙蓉の花がその間を埋めるようにあしらわれ、奥行きのある作品となっている。この三幅は満開の花々が複雑に配置され、美しく装飾性の高いデザインとなっている。「鋪殿花」の代表的作品である。