精選文物と参観路線
親愛なる日本の皆様:
故宮博物館は、この度、日本から修学旅行でご来台する皆様のために、特別精選した文物と参観路線を設けました。14点の人気のある文物の他、文物と日常生活および日本文化との繋がりを通して、文物の知識を学び、更に興味を沢山抱いて頂きたいと思います。この度、新たに設けたルートは、三階の青銅器展示室から始まり、次いで玉器と陶磁器の展示室を経て、最後は一階の集瓊藻陳列室で、解説時間は約60分です。参観の皆様が、ゆったりとしたお気持ちで故宮の旅をなさることを期しております。
- 参観時間:約60分
- お薦めの団体:学生旅行・卒業旅行等
- ルート企画說明:修学旅行に参加されている方は、このルートで、3階から1階まで、計14点の故宮常設展の精選品を鑑賞されることをお薦めします。
展示作業により、陳列室、或いは展示品が変更される場合がありますので、参観なさる当日の情報をご確認ください。(故宮の公式サイトをご確認下さい)
「翠玉白菜」をご覧になった皆様は、普段食卓に出てくるロールキャベツを思い出したのではないでしょうか?ロールキャベツは海外から日本に伝来したものですが、今では日本のどの家でも知られている家庭料理となっていますよね!台湾の私たちも、よく関東煮(=おでん)の中に、このおいしい野菜を見かけます!
「東坡煮」は、九州 長崎の和風中華宴会のお料理です。言い伝えによると、明代、杭州と九州間では海上貿易が行われていたため、「東坡肉」も日本と琉球王国に伝えられ、更に「角煮」になったそうです。この「角煮」は今では普通の家庭料理となっていますが、当時琉球王国では、宮廷料理だったそうです!
皆さんはこの文物をご覧になって、台北市にある超高層ビル「台北101」を連想されましたか?それとも「東京スカイツリー」を思い浮かべられたでしょうか? 台北101は高さ508メートル、東京スカイツリーは634メートルで、この数字は語呂合わせで「むさし(武蔵)」と呼ぶことができます。
玉辟邪
- 前漢晩期~後漢
- 紀元前73-西暦220年
漢代の人は神仙思想を崇拝しており、当時の人にとって、神獣は自分を守ってくれる存在でした。この 玉辟邪(ぎょくへきじゃ)は、漢代の典型的な翼を持った神獣です。こうした造形は一般に西アジアから伝えられたとみられています。
この辟邪は青白玉を彫刻して作られたもので、一部は染色され、このため赤褐色を呈しています。清朝の乾隆帝はこの文物を非常に愛好し、辟邪の胸に御製詩を刻み、更に紫檀木座も配置しました。皆さんは「虎に翼」(もともと強いものがいっそう強くなる、鬼に金棒)という言葉を聞いたことがありますか? 虎に翼が加わると、虎はいっそう強くなります。これは他の猛獣も同じですね。
神社やお寺を訪れた多くの人が「お守り」を購入します。この文物の「辟邪」には「邪悪なものを駆除する」という意味があり、お守りとは形が異なりますが、「趨吉避凶(すうきちひきょう)」(凶を避けて過ごしていれば、自然に吉に向かう)という意味は同じです。
皆さんはポケットモンスターをご存じでしょう。そのシリーズの「ポケットモンスター ソード・シールド」のうち、剣は意気盛んな元気いっぱいの造形になっています。まさに玉辟邪とそっくりではありませんか?
鰲魚花插
- 明
- 西暦1368-1644年
皆さんは「鯉躍龍門(=登龍門)」という言葉を聞いたことがありすか? この「龍門」とは黄河にある滝で、水の流れが非常に急な所です。この滝を鯉が流れに逆らって泳ぎ、一気に滝を登り切ったら龍になるという伝説があります。「鯉躍龍門」という言葉には、長年苦学する受験生が科挙の試験に合格することを表す縁起の良い意味が込められています。
この文物は一匹の鰲魚(ごうぎょ)の姿を表しています。この文物は和田玉を材料に、職人が彫刻したもので、表面の黒い部分を利用して鰲魚の唇、角、尾びれを彫り上げています。尾は上に巻き上げられており、その下には波濤が彫刻され、波紋が刻まれた木製の台座と互いに照り映えています。
この文物を詳細に観察すると、鰲魚の頭部はすでに龍の頭に変わっています。体はまだ魚のままですが、間もなく龍に変身する様子が伺えます。腹部には一匹の小さな龍がおり、鰲魚を応援しているようです。
この文物は花を生ける花器としてだけでなく、美しい装飾品としての用途も備えています。
「鯉躍龍門」の伝説は、江戸時代に中国から日本へ伝わりました。これは現代の「鯉のぼり」の由来です。5月5日の「こどもの日」を祝うため、日本では毎年4月末から5月初めにかけて、至る所で空を泳ぐ鯉のぼりの姿が見られます。
鯉のぼりは、その家の男の子が鯉のように困難に立ち向かい、人より抜きん出てほしいという希望の象徴で、男の子に対する父母の愛情と期待が込められています。
粉晶、紫晶と煙晶圍棋子
- 清
- 西暦1644-1911年
石英は自然界で最もよく見掛けることができる美しい石で、水晶と玉髓に分けられます。水晶には種類の異なるイオンが含まれているため、異なる色が表されます。もしアルミニウムイオンが含まれており、微量の放射を受けてその構造が破壊された場合は煙水晶(スモーキークォーツ)に変わります。
この碁石は粉晶(ローズクォーツ )、紫晶(アメシスト)と煙水晶で出来ています。粉晶の碁石が入っている木製の容器の蓋には「白」の文字が、紫晶と煙水晶の碁石の容器の蓋には「黒」の文字が刻まれています。これらは、私たちが常に目にする黒と白の碁石を表しています。
これら水晶の碁石の色の美しさは、碁を打つ楽しさと共に、碁石そのものを鑑賞する喜びを与えてくれます。
皆さんは囲碁が打てますか? アニメ「ヒカルの碁」をご覧になったことがありますか? まさか故宮博物院で碁石が見られるとは思いもしなかったのでは?しかも石の色が黒と白ではないとは、実に面白いことではないでしょうか?