メインコンテンツへ移動
:::

空間の広がりと瀟洒な「小景」

 南宋の小幅詩意山水画は、もやに覆われた朦朧とした雰囲気の表現が特に優れています。この種の表現手法は北宋の「小景」絵画が継承され、転化されたものです。北宋美術評論家は五代山水画の名家李成や名僧恵崇の「小景」画風は、もの寂しい雰囲気や空間の広がりが特徴的だとしています。北宋の恵崇は水辺の野鳥を題材に平遠構図を用いて、空想の余地のある抒情的な空間を観る者に提供しました。

この文字をクリックして、キーボード操作によるアルバム機能の説明を見る:
  • アップキー:写真選択を表示
  • アップキー:写真選択を非表示
  • レフトキー:上一張照片
  • ライトキー:次の写真へ
  • ESC鍵:アルバムを閉じる
    • 宋 恵崇 寒林鴛鳥図
    宋 恵崇 寒林鴛鳥図
    宋 恵崇 寒林鴛鳥図

     北宋の著名な僧侶恵崇(11世紀前半葉に活動)は福建の建陽出身で、詩文と絵画に優れていた。恵崇の詩作は欧陽修(1007-1072)などに尊ばれた。恵崇の絵は野鳥を題材に、寒々とした水辺や遠方の中洲を背景にして、洗練された趣の広大な風景を表現した。これを「小景」と言い、当時は詩意に溢れる作品とされていた。現代まで伝えられた恵崇の画作は皆無だが、伝世作品の多くは北宋末期以来、水辺の野鳥を題材とした絵画の大多数に、果てしなく広がる川面の朦朧とした風景が描かれており、恵崇の「小景」の影響が見て取れる。この「寒林鴛鳥」の旧題は恵崇作で、この種の題材を代表する作品である。

    • 宋 無款 人物 歴代画幅集冊
    宋 無款 人物 歴代画幅集冊
    宋 無款 人物 歴代画幅集冊
    • 国宝

     足を組んで床榻に腰かけた文士が、詩を詠みつつ花を眺めている。その傍らには桌案や籐墩が置かれ、琴、碁盤、茶炉、花を生けた花瓶、酒肴などの品々が置かれている。画屏に掛けてある小軸の肖像画は、前景の人物に似ているように思える。画中の琴や碁盤、書画、生け花、点茶などの文房清玩は、宋代の文士が愛好した古雅を示す最良の証である。注目に値するのは、文士の背後に置かれた、水辺の野鳥を描いた屏風で、この絵の題材は当時ちょうど流行していた小景山水である。上部にある宋徽宗御府の収蔵印「宣和」と「政和」、宋高宗(1107-1187)の御府收蔵印「乾卦」と「紹興」は、南北宋時代における芸術的風潮の伝承を示している。

    • 伝宋 趙令穣 橙黄橘緑
    伝宋 趙令穣 橙黄橘緑
    宋 趙令穣 橙黄橘緑
    • 国宝

     この書幅と画幅はもとは団扇だったが、後に冊頁に表装された。書幅は高宗が書いた、北宋蘇軾(1037-1101)の元佑5年(1091)の詩作「贈劉景文詩」である。画幅にはうねうねとした川岸が趣ある青緑色で描いてあり、両岸に柑橘系の樹木が生い茂り、水辺には2羽のマガモとセキレイもいる。画面全体に雲霧の漂う朦朧とした林野が広がり、水辺の野鳥と合わせて「小景」の図式となっており、「一年好処君須記、正是橙黄橘緑時」という詩句のイメージが表現されている。冊頁の右上にある旧籤に作者は北宋宗室の画家趙令穣(字は大年、1070-1100の間に活動)と書いてあるが、画風から推測するに、南宋初期に活動した宮廷画家の作品だと思われる。

TOP