溥儒用印
溥心畬の書画作品には、氏名印や雅号印のほか、遊印─「旧王孫」や「羲皇上人」、「無為小人儒」、「只可自怡悦」、「玉壺」などもよく用いられています。それらの字句には、俗世を離れて隠棲する無為の精神が感じられ、民国以降の暮らしへの思いが表れており、作品の脱俗的な味わいと見事に一致しています。
早期に用いた印章は王福庵(1880-1960)のものが中心で、上海で暮らしていた頃は陳巨来(1904-1984)に30種を超える方印の制作を依頼し、来台後は王壮為(1909-1998)や曽紹杰(1910-1988)などに刻印を依頼しました。全体的に美しく整った風格があり、典雅な伝統的美意識が反映されています。書画作品の超俗的な雰囲気と相まって、より一層その美しさが映えています。