海外貿易はヨーロッパ大陸の拡大に当たり、決定的な作用を果たしました。オランダ商人は、ここに於いて極めて重要な役割を演じました。茶葉、シルク、香料、磁器等、素晴らしいものが数多くある異国の珍貴なものは、ヨーロッパの人にとって、あたかも夢の中で求めるような贅沢品であり、それらは貴族と中産階級の人たちが追及した時代の好みだけに留まらず、更にヨーロッパの人の生活スタイルをも変え、アムステルダムを一躍、世界貿易の中心地と成したのです!特にオランダ東インド会社の成立と同時に、インドネシアのバタヴィアを拠点として、中国と日本との交易で大成功を収めた後、欧州、例えばイギリス、ドイツ、及びスウェーデン等も相次いで、各自に所属する東インド会社を設立し、アジアで持続的に利を得ることに期待をかけました。沈没した中国磁器を満載したオランダ東インド会社の商船「白獅号」から浮かび出てきた磁器の標本は、まるで記憶を失ったようです。その記憶をジクソーパズルのように、少しずつ積み重ねて、十七世紀のオランダ黃金時代の交易で栄えた様子を再建します。
オランダ 十七世紀末~十八世紀初 デルフト窯(Delft ware)(?)
青花釉上彩中国風と黒人紋飾磚壁
- サイズ:高さ 171.3 幅 79.5 深さ 4.5 cm
- アムステルダム国立美術館蔵
この素晴らしい壁用レンガタイルには精緻な中国の風景が描かれています。右上の隅の天から降りてきた観音菩薩は、蓮花の上に正座しています。菩薩の後ろには黄色い後光が差しており、様々な中国風の楼閣と人物が庭園の様な風景の中にアレンジされています。この壁用レンガタイルは、元々はより大きな構図のパネルの一部で、恐らく室内装飾のために使われたと考えられます。十七世紀末葉、室内の装飾方式は大量の磁器で張り出した棚や漆板の壁の面を飾る方式が流行していました。これら壁用レンガタイルも同様の機能を有しており、その持ち主が地元で親しい仲間と歓談したり、お茶を飲んだりするための部屋を、異国情調溢れる中国風の環境にしたのでしょう!