恵風和暢─摺扇の精粋 特別展,展覧期間 2016/7/1~2016/9/25,北部院区 第一展覧エリア 208、212
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雅俗共賞─貴賎の別なく親しまれた摺扇

清代になると、摺扇は身分にかかわりなく楽しめる芸術文化の一つとなり、縁起のよい絵や文字を書いた摺扇が人気を博しました。書画家の交流や合作もしばしば行われ、収蔵家からの製作依頼も頻繁にありました。書芸界で碑学が盛んになってからは、摺扇に残碑の識語が書かれるようになり、それまでにない斬新な表現も見られるようになりました

清 任薫 趕鵝図

任薫(1835-1893)、字は阜長、浙江蕭山(現在の浙江省杭州市蕭山区)の人。海上画派の名家任熊(1823-1857)の弟。人物は兄の画法を学んだが、独自の創意も見られる。花鳥画でも名を知られた。

任薫は後半生のほとんどを蘇州で過ごした。この作品の款識を見ると、「子賢仁兄大人雅属。阜長任薫写于呉門。」とあり、呉門で製作されたものだとわかる。幼い子供がガチョウを追う姿が描かれている。人物の自在な筆遣いに対して、野草などの植物は力強い。ガチョウの群れはシンプルな筆致で生き生きと描かれている。農村の素朴な雰囲気が金箋の扇面に表現されている。一方の面は光緒11年(1885)に書かれた王藻墀の「行書金丹四百字真言」となっている。これもまた「子賢」の作である。

清 任薫 趕鵝図

民国 趙雲壑 隸書漢碑二則

趙雲壑(1874-1955)、字は子雲、名は起とも言う。江蘇蘇州(江蘇省蘇州市)の人。呉昌碩の弟子。花卉画や山水画、行書には昌碩直伝の秀麗かつ古風な味わいがある。

この作品は漢碑を隷書で臨写したもので、用筆に重厚で古樸な趣がある。碑刻の由来を記した行書による題識は、鷹揚かつ豪放な風格がある。臨碑と題識は字体も大きさも異なり、別々に配置されている。黒い扇骨と書法の墨色が互いに映えて一層趣を高め、古風で素朴な美感をかもし出している。一方の面には山林と生い茂る竹、茅葺の家屋が描かれている。書画ともに「薪蓀仁兄」による甲子年(1924)の作。

民国 趙雲壑 隸書漢碑二則