恵風和暢─摺扇の精粋 特別展,展覧期間 2016/7/1~2016/9/25,北部院区 第一展覧エリア 208、212
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揮灑酬贈─贈答品としての摺扇

明朝宮廷で摺扇の下賜が慣例になると、官員も常に摺扇を携帯するようになり、摺扇に字句を書き入れる風潮が生じました。上部が広く下部がすぼまっている摺扇は平面的で広げた時の曲線が美しく、明代中頃から書画家にも好まれるようになり、独特の芸術様式が生まれました。沈周(1427-1509)や祝允明(1461-1527)、文徴明(1470-1559)、唐寅(1470-1524)など、呉派を代表する名家の見事な画扇が伝えられています。

明 文徴明 七言律詩

文徴明(1470-1559)、江蘇蘇州(現在の江蘇省蘇州市)の人。本名は壁、42歳以降は字で知られるようになり、後に徴仲に改名、衡山居士と号した。

「金山寺待月」は文徴明による七言律詩である。「玉山前玉露涼、晚潮微上月洋洋。魚龍深夜浮光怪、雲樹揺空帶渺茫。水国題詩酬一宿、中泠裹茗薦新嘗。江風吟酒不能寐、起踏松陰自繞廊。」川風に吹かれながら景色を眺め、月下で銘酒を楽しむ様子が詠まれている。宿を借りた友人に贈った作品らしい。行書の結字は細長く、行間はかなり狭い。用筆は勁健豪放である。「玉華」が何者なのかは不明だが、扇面にこの人物へ扇を贈る旨が文徴明自身により記されている。

明 文徴明 七言律詩