灯篭を見物したり、灯篭を手にそぞろ歩いたりするのも元宵節の大切な民俗の一つです。裕福な家では色鮮やかな灯篭を置いて、親族や友人らと眺めて楽しみます。子供たちはいろいろな動物の飾り灯篭を持ち、見せびらかしながらはしゃぎ回ります。高さが5、6階建てのビルに相当する「鰲山」という大きな灯篭が見物客のために用意されます。よくできたからくりや仮山、自然を模した庭園などがあり、まばゆい光が四方に放たれる、色鮮やかで美しい大型の灯篭です。画家たちは元宵節の灯篭を好んで主題にしました。古代の元宵節の盛況ぶりが絵画として記録され、月光と灯篭の明かりが交わる中、新しい年を迎えた喜び溢れる光景が描写されています。
清 画院
画十二月月令図 一月
- 形式:軸
- サイズ:175 x 97 (cm)
旧暦正月15日の元宵節に行われる季節の行事─飾り灯篭を眺める催しの様子が描かれている。楼閣や東屋のいたるところに吊るされた彩り華やかな灯篭、屋外では花火があがっている。人々が集まり色とりどりの灯篭を品評しているかのように見える。庭園に咲く梅の花を眺めている人々もいる。門廊の屋根は重厚な卷棚頂となっている。円弧形の屋根を持つ邸宅の正門や折れ曲がる回廊が庭園を幾つかに仕切って独立した空間を作り、その線が上に向かって斜めに伸びている。その先端に位置する楼閣の屋根は重檐卷棚である。左手の庭園には箱形の飾り灯篭が高々と掲げられ、老若男女が集まって出し物を見物している。そのにぎやかな様子を見ていると、楽しげな歓声が聞こえてくるようだ。
清
昇平楽事図
- 形式:冊
- サイズ:18.5 x 24.3 (cm)
『昇平楽事図』は計十二開あり、宮廷の仕女や子供たちが元宵節の日に新しい年を迎えて歓び、庭園で楽しそうにはしゃいでいる様子が描写されている。画中には象や鶴、鹿、鷹、兎、魁星、コウモリを象った灯篭が描かれており、その様式は多様で精美な作りとなっている。宮廷の豪奢な正月の情景が十分に表現されている。
この冊には吉祥を意味する各種の絵図が収録されている。第一開の「白象花灯」には、如意や戟を入れた花瓶を背負った白象が見える。これには太平有象、吉祥如意などの寓意が込められている。民間で好まれる正月用の題材の一つである。精美な画風から院画家の手による作品だと思われる。