伝統的な季節の行事は農耕社会を起源としています。春の種まき、夏の草刈り、秋の収穫、冬の貯蔵─季節ごとに変わる暮らしのリズムを調整するために、四季の移り変わりが反映された様々な年中行事が催されるようになり、時代が下るにつれて季節ごとの習俗や文化もより一層豊かなものへと変化していきました。新年を祝う各地域の行事や大晦日の一家団欒はもちろんのこと、神や祖先を祀る儀式なども全て、天地万物への感謝の気持ちや祖先を尊ぶ心、未来への祈りなどを表しています。こうした行事には倫理観だけでなく、文化的な意味も含まれています。
数ある年中行事の中でも旧暦1月15日に行われる「元宵節」は特に喜ばしい行事だと言えるでしょう。「元宵」は「上元節」、「元夕節」、「灯節」とも言われます。その歴史は漢の武帝の「太一神」信仰にまで遡ることができ、漢代には盛大に火を灯して祭祀が執り行われました。唐代になると、灯火で神を祀る儀式が華やかな灯篭を楽しむ催しへと変化し、夜は芝居などの出し物や舞踊も披露されるようになり、大勢の見物客が押し寄せる、にぎやかな祭典の一つになりました。宋代には元宵節の期間中に「灯市」が置かれ、色とりどりで形も様々な飾り灯篭が売られるようになり、明代以降は一層のにぎわいを見せるようになりました。現代の元宵節でも灯篭見物やなぞなぞ、「擲炮城」という遊戯のほか、「湯円」(もち米の粉で作っただんご)を味わうなど、いろいろな催しが行われます。また、その時々の流行や科学技術と伝統が結び付いてより美しく煌びやかになり、新年のお祭りの楽しく喜ばしい雰囲気を一層盛り上げています。
国立故宮博物院では元宵節に関する質量ともに優れた書画作品を収蔵しています。この度の特別展では、「新年の伝統行事」、「新しい年を迎える喜び」、「華やかな灯篭と春の訪れ」─三つのコーナーに分けてご覧いただきます。時空を超えて古代の正月行事の楽しみを感じながら、元宵節の華やかな灯篭祭りを体験していただきます。本特別展開催期間中、故宮南院でも新年を寿ぐ特別展「戊戌狗年‧喜迎上元」が開催されます。めでたい元宵節の期間に南北故宮の展示を合わせてご覧ください。