めずらしい動物
昔は今のように便利な乗り物はありませんでしたから、遠くはなれた所に住んでいる動物はめったに見られませんでした。遠い所に住んでいる動物はとてもめずらしい生き物だと思われて、伝説の不思議な動物のイメージと結び付けられました。たとえば、みんながよく知っているキリンは、600年ぐらい前は「麒麟」というおめでたい生き物だと考えられていました。日本と韓国では今もその不思議な動物と同じ「キリン」という名前が使われています。昔の画家はそういうめずらしい動物を絵に描く時、本物を見たことがなかったので、いろいろ想像しながら描きましたから、本物の動物とはだいぶちがっています。
-
清 劉九德画狻猊
劉九徳(17世紀末)は順天(今の北京市)出身の画家です。人物の絵が得意で、特に宮廷で働く女の人や肖像画が上手でした。
「狻狔」は昔の獅子(ライオン)のことです。この大きな絵には、流れの速い川の側を歩く獅子が描かれています。大きな身体が画面いっぱいに描いてあるので、堂々とした獅子がとても強そうに見えます。この獅子はすごく細い線で描いてあります。たてがみも一本一本、丁寧に描き込まれています。それに比べると、背景はかなりおおまかに描いてあります。その違いがとてもおもしろいですね。でも、昔の人たちの多くは本物の獅子を見たことがなく、いろいろ想像しながら描いたので、この絵のようにちょっとへんてこで、ユニークな獅子になりました。