めずらしい動物

昔は今のように便利な乗り物はありませんでしたから、遠くはなれた所に住んでいる動物はめったに見られませんでした。遠い所に住んでいる動物はとてもめずらしい生き物だと思われて、伝説の不思議な動物のイメージと結び付けられました。たとえば、みんながよく知っているキリンは、600年ぐらい前は「麒麟」というおめでたい生き物だと考えられていました。日本と韓国では今もその不思議な動物と同じ「キリン」という名前が使われています。昔の画家はそういうめずらしい動物を絵に描く時、本物を見たことがなかったので、いろいろ想像しながら描きましたから、本物の動物とはだいぶちがっています。

  • 明人 内府騶虞図
    明人
    内府騶虞図

    永楽2年(1404)の秋、周王朱橚の領地にある神后山に、騶虞(伝説の不思議な生き物)が現れるという話が広まりました。そこで、朱橚は兵を連れて騶虞を捕まえに行きました。捕まえた騶虞は永楽帝に贈りました。この絵には、神后山にいた騶虞が描かれています。騶虞はとても珍しい真っ白な虎で、世の中のいいことや悪いことを予知する力があると言われます。騶虞が姿を見せるのはとてもおめでたいことで、国を治める人に仁と信の美徳(立派な行いや考え方)があることを表しています。

  • 清 劉九德 画狻猊
    清 劉九德
    画狻猊

    劉九徳(17世紀末)は順天(今の北京市)出身の画家です。人物の絵が得意で、特に宮廷で働く女の人や肖像画が上手でした。

    「狻狔」は昔の獅子(ライオン)のことです。この大きな絵には、流れの速い川の側を歩く獅子が描かれています。大きな身体が画面いっぱいに描いてあるので、堂々とした獅子がとても強そうに見えます。この獅子はすごく細い線で描いてあります。たてがみも一本一本、丁寧に描き込まれています。それに比べると、背景はかなりおおまかに描いてあります。その違いがとてもおもしろいですね。でも、昔の人たちの多くは本物の獅子を見たことがなく、いろいろ想像しながら描いたので、この絵のようにちょっとへんてこで、ユニークな獅子になりました。

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