可用のモノ
硯台、墨床(磨りかけの墨を置いておく台)、硯滴(すずりの水)、筆洗(筆の穂を水で洗うための器)、紙鎮(文鎮)、香炉、花瓶等の器物は、共に十七世紀の文人の生活状態を創造しました。これらは、高尚な観賞用の趣味の品、或いは書斎を飾る道具として使用され、特定の時空下にユニークな生活状態を表しています。収集家の姓名や款識のある文物は文人、及び収集家のそれぞれの気持ちと経済能力を反映しています。「可用」と「不可用」の分野では、細かな部分は、文震亨、及びその友人たちの知識と教養、そして品格への判断が体現されています。時節が流れ行く間にあって、文人たちは心穏やかにモノを構築する世界の中で、「明代書斎情境区」は、正にこうした価値観の中に於いて文人が掲げる理想の書斎を具体的に表現したのです。