伝説の三神山や五山、十洲三島は、そもそもどのような所なのでしょうか。古代の画家たちは豊かな想像力を発揮して、崑崙や蓬莱、方壺、瀛洲などの仙境のイメージを絵で表現しようとしました。それらの仙境を行き来する仙人たちの多くは天上の華麗な宮殿に住み、神獣に乗り、天を自在に飛び回り、海の上にも立てるなど、超人的な能力を持っていました。
宋 緙絲仙山楼閣
- 形式:冊
- サイズ:25.5x40.8 cm
この作品の構図は左右対称になっているが、その中に変化が見られる。山石が積み重なる前景には不思議な花々や果実が生い茂り、果物を採る猿の群れや舞い飛ぶ野鳥の姿も見える。中央に高々と聳える楼閣があり、1階には屏風の前で酒を酌み交わす人物がいて、2階には欄干にもたれて二人で風景を眺める人物が3組いる。上空に白鶴や鳳凰が舞い飛んでいる。様々な形の雲がたゆたい、俗世から隔絶された仙境の雰囲気をかもし出している。
天上の雲に映える屋根が、この地が仙境であることを伝えている。この点は鄭州宋墓壁画に見られる仙境の表現方法に似ている。また、「欄干にもたれる仙人」は、北宋の蘇軾(1037-1101)が郭忠恕(?-977)「楼居仙図」に入れた題「縹緲飛観、憑欄誰子」に呼応していることから、宋人がイメージした華麗な仙境の一例と見なすことができよう。
明 文伯仁 方壺図
- 形式:軸
- サイズ:120.6x31.8 cm
『史記』によれば、海上には蓬莱と方丈、瀛洲と言われる三神山があり、その場所は渤海だという。『列子』では「方丈」を「方壺」と言い、岱輿と員嶠、瀛洲、蓬莱と合わせて五山の一つに数えている。
呉派の画家文伯仁(1502-1575)の手による本作には、波間に浮かぶ「方壺」が青緑着色画で描かれている。三角形の山峰が聳える中に、御殿と常緑の樹木が見える。その間を縫うようにしてたなびく白い雲が、山の上で一つに溶け合い一気に上昇している。その眺めは、「三神山は遠望すると雲のように見える」という『史記』の記述にも合致する。この島は人が近づくと水面下に隠れ、風に吹かれて移動する不思議な性質があるという。画幅の上下に枠内に書き入れた題があるが、これは早期の釈道画の手法を模倣したものである。