「玻璃(はり)」(ガラス)は、中華圏の歴史的文献に頗黎や陸離、流離、琉璃、薬玉、瓘玉、玻瓈、料器などの名称でも記録されています。人類文明の発展史上、最も早い時代に誕生した人工素材の一つで、現在でもあらゆる面で私たちの暮らしに影響を与えています。考古資料によれば、紀元前3000年頃に古代エジプトと西アジアで原始的なガラス質の物質が出現したとされ、「faience」(ファイアンス)または「釉砂」と言われるその物質のほか、焼成温度が比較的高い「玻砂」(frit)で作られた物もあります。
西周時代の遺跡からも、二酸化ケイ素を主な成分として焼成により作られた、玻璃に近い質感の物品が発見されています。時代が下ると、玻璃は玉や石のような物質から光沢を放つ人工素材へと変化しました。初めは不透明でにぶく光るだけでしたが、しだいに光を通す透明なものになり、写真撮影にも使われる多機能な素材へと進化しました。独特の美感と質感を持ち、絶えず開発され続けた多様な機能は様々な場面に用いられ、新旧の文化を織り交ぜた永続的な価値を持つ素材として利用されています。
国立故宮博物院所蔵の玻璃製文物は清朝旧蔵の各種器物を継承したもので、装身具や文房具、容器、置物などの装飾品、装飾用の小物などが含まれます。そのうちの多くが多宝格に収納されており、宮廷製作品と希少価値の高い西洋の精美な文物を代表する品々だと言えます。ごく小さな物ですが、大型の容器とはまた違った趣や収蔵価値があります。特殊な人工素材である玻璃は、清代皇室による管理の下、多種多様な発展を遂げました。
この度の特別展では、本院所蔵の清朝旧蔵玻璃用器を中心に、玻璃を主な素材として製作された器物、玻璃が象嵌された文物やレンズなどが使われた器物を展示いたします。このほか、本院所蔵品のうち、原始的な玻璃の性質と形状を持ち、造形や製作技術、色彩表現に関連するその他素材を用いた文物なども合わせて展示し、清代玻璃工芸に内包される文化の伝承や融合、変遷をご覧いただきます。