唵嘛呢叭咪吽―国立故宮博物院所蔵チベット仏教文物特別展,展覧期間 第一檔2016年5月3日至2016年7月31日,第二檔2016年8月6日至2016年11月6日,北部院区 第一展覧エリア 103、104
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訳伝四海

仏教を広めるには、僧侶の口伝だけでなく、経典の翻訳もまた非常に重要でした。梵語で書かれた仏典のチベット語翻訳は七世紀に開始されました。しかし『甘珠爾』に収められている二十部の経典は、漢訳仏典をさらに翻訳したものでした。例えば『大般涅槃経』『楞伽阿跋多羅宝経』などです。 十一世紀になると、チベット地区で発展した、いわゆる蔵伝仏教が外部に伝えられていきました。特に二十世紀以降は欧米にまで伝えられ、経典や各教派の修行に用いられた書籍は、世界の各種の文字によって翻訳されました。 中華圏では十四世紀、チベット語で書かれた『蔵文大蔵経』のモンゴル語訳が完成しました。このほか『緑像救渡仏母讃』の漢文、満州語、モンゴル語による翻訳、『真実名経』の西夏文字、漢文による翻訳、『毘奈耶事』の満州文による翻訳、薩迦派の経典『吉祥喜金剛集輪甘露泉』『如來頂髻尊勝仏母現証儀』による漢訳が完成しました。これらの仏典は、使用されている文字は異なっても、如来の教え、法味を正確に伝えています。

吉祥喜金剛集輪甘露泉 明英宗正統四年 泥金写本

明代の薩迦派の僧、莎南屹囉(bsod nams grags)が、薩迦派の先達から伝えられた喜金剛(ヘーヴァジュラ・タントラ)の修行に関する教えを集めたもの。例えば八思巴(=パクパ)が作成した『吉祥喜金剛現證如意宝(dpal kye rdo rjevi mngon rtogs yid bzhin nor bu bzhugs)』や『吉祥喜金剛集輪甘露瓶(kye rdo rjevi tsnogs kyi vkhor lovi cho ga bdud rtsi bum pa zhes bya ba)』、薩迦派の三祖、胆巴(功葛剌思巴)が監修した『吉祥喜金剛現証六支(dpal kye rdo rjevi mngon rtogs yan lag drug pa bzhugs)』の翻訳、編集を行った。

内容は前行、正行、回向結行の三つに大別される。前行には設壇、請法、集福慧二資糧が、正行には入定と出定の二つが包括されており、入定はさらに生起次第、円満次第の二項目に分かれている。これは喜金剛密法を学ぶための書籍である。

吉祥喜金剛集輪甘露泉  明英宗正統四年 泥金写本