文物紹介
この杯は皇帝が元旦に行われる開筆の儀式で用いる「金甌永固杯」で、乾隆4年(1739)に制作された。黄金製で、耳は夔龍、足は鼻を巻いた3頭の象形となっている。器身には纏枝宝相花が彫刻してあり、口縁は帯状の回紋で装飾されている。回紋の中ほどの一面に篆書で「金甌永固」と刻されており、別の一面には「乾隆年製」とある。点翠の地に赤と青の宝石、真珠がはめ込んである。長年の使用で破損し、嘉慶2年(乾隆62年/1797)に皇帝の命により新しい杯が制作された。その時に新しく作られた「金甌永固杯」は現在、北京故宮博物院に収蔵されている。新旧の「金甌」は大きさも外観もほぼ等しい。国家と政権を象徴する黄金製の「金甌」は、最も直接的かつ具体的に「金甌永固」(国家の安泰)を表現したものであることは間違いない。