古美術を愛した乾隆帝

乾隆帝は多数の美術品が収蔵されている宮廷で、古い書物を熱心に閲読したり、古物の鑑定や古書画の観賞を楽しんだりしただけでなく、収蔵品の由来や制作過程も明らかにしようとしました。また、古代の文物にまつわる儀式を取り入れたり、賦詩の題として個人的な思いを詠じたりと、個々の文物に寄せた詩文や君臣揃っての作品鑑賞と品評などを通して、収蔵文物に所有者としてのしるし─印章や作品に直接刻した詩文などを残しました。乾隆帝が自ら研究や保存に努めたこれらの骨董品は、一人の皇帝の「古代」に対する関心の高さを示すのみならず、意図して古人との対話を行って古代との繋がりを結び、古代と当代が呼応する歴史的な軌跡を改めて築くに至りました。第2章の展示作品からは、乾隆帝が各文物の質感や款識の持つ意味に特別な注意を払っていたことがわかります。制作年代を推定する際はそれらを根拠としたほか、古い時代の典故も用いて考証を補いました。御筆による序文の多くに「崇儒重道を実践しつつ詩文による教化を重んじ、礼楽を盛んにして民を善へと導く」と記されているのと同様に、乾隆帝の骨董品鑑定や評価は歴史を鑑とすることを目的としていました。