天国の宝蔵─ローマ教皇庁所蔵文物特別展,展覧期間 2016年2月5日至2016年5月3日,陳列室 105、107
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ローマ教皇とその歴史

イエス・キリストは首座使徒の一人であるペトロとその後継者に天国の鍵と宗徒の長たる職位を授けたと言われています。これがローマ教皇とローマ教皇庁の起源です。その後、カトリック教会の領袖であり、バチカン市国の元首としての地位が築かれました。1274年に開催された第2リヨン公会議で教皇選挙制度の改善が図られ、教皇の没後速やかに枢機卿達による選出を始めることなどが定められました。1942年からはシスティーナ礼拝堂で選挙が行われるようになりました。この制度は現在まで継続しており、教皇は終身制となっています。11世紀に教皇グレゴリウス7世が教会改革を推進したことにより、ローマ教皇庁も積極的に国際上の実務に参与するようになり、教会改革の理念を広めるべく努めました。ローマ教皇庁は国際的には一貫して独立した立場を保ち、誰もが各々の権利と尊厳を有することを世の人々に訴えました。教皇が身につける教皇冠や聖器には奥深い宗教的意義が込められています。「聖ペトロの天国の鍵」は、教皇がペトロの正統な後継者であることを示しています。教皇が戴く三重冠は「司祭・司牧・教導」の三権を表します。「ローマ教皇とその歴史」では、歴代13名の教皇が使用した教皇冠や祭服、聖器や小物などが展示されます。いずれの器物もカトリック信者にとっては非常に貴重で神聖なものです。

ベネディクトゥス13世(在位期間1724-1730)宝石付き胸飾り

  1. 1729年 イタリア ローマ
  2. 金、銀、アメジスト、アクアマリン、エメラルド、サファイア、ガーネット、ルビー等
  3. 長さ14.5cm 幅15cm 高さ3.5cm
  4. バチカン 教皇儀典室所蔵

この宝石で飾られた胸飾りは1792年にローマで製作された。枢機卿ジュゼッペ・アルバーニ(Giuseppe Albani / 1750-1834,1724-1730 バチカン秘書長)が世を去ると、教皇儀典室に収蔵された。ベネディクトゥス13世(在位期間1724-1730 / 本名ピエトロ・フランチェスコ・オルシーニ)が用いた宝石付きの胸飾りは、黄金と金銀メッキ、アメジスト、アクアマリン、エメラルド、サファイア、ガーネット、ルビーなど、色とりどりの宝石が散りばめられている。中心にある金属の浮き彫りは神聖な鳩と四方に広がる光の筋を表しており、ダイヤモンドがはめ込まれている。その周囲も様々な宝石で装飾されている。最上部に輝く大粒のアクアマリンの両側にはピンク色の鉱石がはめ込まれている。鳩の浮き彫りの下に大粒のガーネットが左右に一つずつ配され、その間にダイヤモンドで縁取られたガーネットがある。この胸飾りには合わせて六つのエメラルドが使われている。裏側にも四つの装飾があり、上部にバラと聖母子像、下部にドミニコ会の紋章、左右に聖フィリッポ・ネリと聖ドミニコの姿が見える。一番下にオルシーニ家の紋章と年数を示すローマ数字「MDCCXXIX」(1729)が刻されている。ドミニコ会の図像はベネディクトゥス13世がドミニコ会士だったことを記念したものである。注目に値するのは、1844年に『教会史大辞典』の第15巻で編纂者モロニ(Cav. Gaetano Moroni)がこの胸飾りに触れている点である。モロニはグレゴリウス16世の筆頭執事を務めていた。この聖遺物がこの年になって辞典に登場したということは、1844年に教皇儀典室に収蔵された可能性が高い。1867年から1899年の所蔵品リストにも記載されている。

ベネディクトゥス13世(在位期間1724-1730)宝石付き胸飾り

ピウス9世(在位期間1846-1878)の三重冠

  1. 宝石職人ジオーティとデイベル、宝石商ピザーラによる加工
  2. 1854年 マインツ(ドイツ)とマドリッド(スペイン)
  3. 長さ35cm 幅24cm 高さ24cm
  4. バチカン教皇儀典室所蔵

この三重冠は1854年にブルボン王朝のスペイン女王エリザベス2世(1830-1904)からピウス9世に贈られたものである。その年のクリスマスの典礼で初めて使用され、その後はバチカンのサン・ピエトロ大聖堂に収蔵された。ドイツのマインツの宝石商ジオーティ(C. Goettig)とデイベル(W. Deibel)によって1854年に製作され、ブルボン王室の宝石商ピザーラ(Carlo Pizzala)によって宝石の埋め込みが行われた。

三重冠のフレイムは銀製である。円柱形の宝冠全体が植物の枝や葉で飾られ、頂点に球体が一つある。球体の上に立てられた十字架は黄金の枝や葉、花々に囲まれている。宝冠の材質は黄金で、ダイヤモンドやエメラルド、ルビー、サファイヤ、アクアマリン、真珠で飾られている。一層ごとに木の葉状の装飾が施され、小粒のダイヤモンドで埋め尽くされている。装飾の中央には大粒のダイヤモンドがはめ込まれ、尖塔状の装飾の先端を飾る真珠と交互に配されている。宝冠から垂れ下がるリボンも真珠で装飾され、高貴な雰囲気を高めている。保存状態も良好である。

ピウス7世(在位期間1800-1823)の三重冠
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