天国の宝蔵─ローマ教皇庁所蔵文物特別展,展覧期間 2016年2月5日至2016年5月3日,陳列室 105、107
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聖座

2013年に第266代ローマ教皇に就任した現教皇フランシスコは、人と自然の調和をとても大切に考えています。最新の回勅『ラウダート・シ』には、環境問題に関する論述があり、世の人々がアッシジの聖フランチェスコを見習って、神が創造した宇宙万物を自分自身のようにとらえるよう諭しており、ローマ教皇庁の環境問題に対する重視が示されています。それと同時に、教皇フランシスコは「いつくしみの特別聖年」の開催も宣言しました。この行事は2015年12月8日(無原罪の聖母の大祝日)から翌年の2016年11月20日(王であるキリストの大祝日)まで続きます。年初めの12月8日に聖ペドロ大聖堂の「聖年の扉」が開かれ、いつくしみの年が始まります。

エデッサのイエス・キリスト聖画像

  1. 3世紀~5世紀
  2. 外枠Francesco Comi製作(1623年)
  3. 高さ65cm 幅45cm
  4. バチカン 教皇儀典室所蔵

イエス・キリストの聖画像を収めたこの額は17世紀に製作された。精巧な装飾が施された額と長い年月を経て色褪せた肖像画が強烈な対比をなし、聖遺物に収められた聖遺物となっている。14世紀にジェノヴァの聖画像が額装されてから、バチカンの聖画像もジェノヴァの聖画像とほぼそっくりに別の布地に示されるようになり、まるで表装されたジェノヴァの聖画像に取って代わろうとするかのようであった。バチカンとジェノヴァの聖画像はいずれもビザンティウム時代に崇敬を集めたエデッサの聖顔布(マンディリオン)の複製品である。


キリストの受難を知ったエデッサ(現在のトルコ領シャンルウルファ)の国王アブガルは、画家を聖地に派遣してキリストの肖像画を描かせようとしたが、伝統的な手法では聖なる光を放つキリストの顔をうまく描くことができなかったという。しかし、画家がキリストの顔を洗い清めて布でふいていた時に神の奇跡が起こり、キリストの顔が布に転写されたと伝えられる。アブガル5世は癩病を患っていたが、画家が持ち帰ったその布で病もすっかり癒えたと言われている。それはまるでキリスト昇天後にアブガル5世の身に残された奇跡のようであった。


その後、信者たちはエデッサの聖顔布に別の布(brandea)をかけて神の奇跡を得ようとし、そうした行為が伝統になるなど、エデッサの聖画像は一般的な画作とは全く異なる性質を持つようになった。ギリシャ語の「acheiropoieton」とは、「手にて描かれざる聖像」を意味し、この行為が図画と聖遺物の間で生まれた肖像伝承法の一つとなったのである。時代が下ると金糸が加えられたほか、肖像そのものを布に直接染付けたものもある。その種の肖像画は輪郭がぼんやりとしている。エデッサの聖顔布はキリストの影のように、キリストが確かにこの世に存在していたこと、ひとまず神の御許へ帰っただけであることを私たちに思い起こさせる。そうして私たちはキリストの人間性や神性に思いを致すことができるのである。


言い伝えによれば、エデッサの聖顔布に布などをかぶせれば、その聖なる像を直接写し取ることができるという。その後、多くの信者たちが次々にエデッサを訪れるようになり、ムスリムに掌握されていたエデッサ城から聖顔布が救い出されると、コンスタンティノス7世(905-959)によって聖顔布はコンスタンティノープルの宮廷内に安置され、キリストの受難を象徴する聖遺物10点と合わせて収蔵されたと伝えられる。これは、聖顔布が「比較的質素」な契約の箱に収められたという10世紀の記録とも合致する。契約の箱は天使の像で装飾されたバロック風の外枠があり、ケルビム(智天使)が偉大なユダヤの遺物を見守っているかのようである。中世のこの時代に、モーゼの十戒に定められた「偶像崇拝の禁止」が、エデッサの聖顔布によって覆されることになったのは、キリスト降臨によって示されたその人間性や神性が、聖跡と聖像の流伝を許したことを意味している。また、神が最初にユダヤ人と結んだとされる契約、文字として表された基礎的な神学と戒律も書き換えられることになった。

エデッサのイエス・キリスト聖画像

ピウス11世(在位期間1922-1939)の祭服と聖帯

  1. 聖クララ修道院フランシスコ会修道女製作
  2. 1926年 フランス マザメ
  3. 絹布、金糸
  4. 高さ105cm 幅61cm
  5. バチカン教皇儀典室所蔵

この祭服と聖帯はアッシジの聖フランチェスコ没後700年記念の際、フランチェスコ会からピウス11世に贈られたものである。金色の絹織物に金糸と色糸で模様が刺繍されている。方形の枠内には、聖フランチェスコの物語やピウス11世の肖像、伝教の様子、天使と聖人の間にいる聖母、十字軍遠征の様子、サン・ピエトロ大聖堂を載せた帆船など、教会を象徴する図案が刺繍されている。左右の縁は数々の聖人とフランチェスコ会の殉教者の肖像で縁取られ、衿口はシンプルなレースで飾られている。聖帯(オラリ)と腕帛(マニプルス)にもアジアと欧州、中東での伝教風景が刺繍されており、縁には聖人と殉教者の小さな肖像が刺繍されている。聖帯と腕帛の端には金糸の房飾りがついている。

ピウス11世(在位期間1922-1939)の祭服と聖帯
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