収蔵品の質と量は、その博物館の独自性を決定すると言っても過言ではありません。

1925年に創立された国立故宮博物院の収蔵品は、清朝から継承した宮廷コレクションが中心となっていますが、収蔵品の数量と種類が拡大するにつれて新たな活力が注ぎ込まれると同時に、博物館としての存在価値も高められ、世界トップクラスの博物館の一つに数えられるようになりました。この度の特別展では、国立故宮博物院創立90周年を祝うため、近年、続々と故宮に収蔵された器物や書画作品、書籍、文献資料など、貴重な作品の数々を展示いたします。展示作品には、国内外に散逸した清朝文物も含まれるほか、異なる時期に収集された文物の背景や収蔵目的なども反映されています。また、90周年記念特別展開催に合わせて、各界からのご寄贈とご支援に心より感謝の意を表します。寄贈いただいた文物が本院所蔵作品の欠落を埋めることも多く、伝世の貴重な名品が発見されることもあり、美術界に驚きと喜びをもたらしました。

この度の特別展は三つのコーナーに分けて展示いたします。「器物」では、6千年もの長きに渡る歴史の大河を越え、紅山文化から近現代の傑作まで、人類文明の発展や思想と信仰、社会の変遷、芸術文化の潮流など、歴史の壮大な流れをご覧いただきます。「書画」では、歴代文人画家の名作を精選し、個人が直面した人生そのものや時代的精神、自然、美感への探求と画家自身の研鑽などをあますところなくご覧いただきます。「図書文献」では、各種書籍や文献資料を幅広くご紹介しつつ、巻物や書物に記された文字や印刷物、模写による絵図などから、人々がどのようにして遠く時代を超えてこの知恵の結晶を継承し、永続的な文明の発展へと導いたのかを明らかにします。

『詩経』の「小雅‧鹿鳴之什‧天保」は、九つの「如」という文字を用いて大自然の景物を結び付け、天地の守護と永遠の繁栄を象徴し、心からの祝福を表しています。この度の特別展でもそれと同様に、故宮所蔵文物の精粋をご覧いただきながら、故宮が担い続ける重責─国家の至宝を守り継ぐ歴史的な意義、広範な収集と研究、古典発掘と新たな創造─そのエネルギーも感じていただければと思います。