宋 李唐 万壑松風
李唐は南北宋の時代に
先人の後を受け新たな境地を拓いた重要な人物である。
李唐は北宋末期に「万壑松風図」を描いた。
この作品も巨碑式の構図ではあるが、
「谿山行旅」、「早春図」と異なるのは、
人物も建築物も描かれていない点である。
主峰も意図的に小さく描いてあり、
近景の樹石の比率が拡大され、
近景の松林と観る者の距離を近づけている。
深山幽谷に身を置いているかのように、
松葉を揺らす風の音に静かに耳を傾けると、
溪澗の急流の音もそれに重なり、
絵画と音楽が調和的なメロディを奏でる交響曲となる。