国立故宮博物院では、清朝旧蔵品を基礎として、購入または寄贈、寄託など、長年に渡ってコレクションの拡充に努めてまいりました。それら新たに収蔵、寄託された書画作品が本院収蔵品の不足を補って特別展の幅を広げ、展示内容もより豊かに、多元的なものとなっています。この度の特別展「典蔵新紀元シリーズ」では、民間から購入または寄贈された収蔵作品を展示することにより、ともに文化の振興を目指し、故宮コレクションの新たな世紀へと歩み出せるよう期待しています。
「典蔵新紀元シリーズ」の一つであるこの特別展は、清代末期から民国初期にかけての上海画壇を主題に、1850年から1930年までに制作された作品58点を展示します。1843年に対外貿易の窓口として上海が開港されると、上海港は中国随一の大港湾となりました。経済発展により誕生した新たな富裕層が文化的な商品を大量に求めたため、書画市場は活況を呈しました。それにともない、書画の売買を生業とする中国各地の書画家たちも、この地に集まるようになりました。そうした書画家たちは明るく鮮麗な色遣いや、わかりやすく通俗的な題材を扱い、国内外から訪れる幅広い顧客の目を引きつけ、多種多様な画風が出現する中、俗に言う「海派」が形成されました。
本特別展は、「八方雲聚」、「金石花鳥」、「山水士気」、「書画営生」─四つのコーナーに分け、この時代の上海画壇で見られた多元的な風格の形成や金石画派の興起、山水画風の発展、書画家の支援者や賛助法の変化などを掘り下げてご紹介します。近代的な絵画市場が勃興する際に、花鳥画や山水画、人物画などの伝統的題材に生じた変遷と発展を整理し、20世紀へと歩みを進めた上海の絢爛多彩な絵画の世界をご覧いただきます。