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盆景の眺め

  •  盆景(鉢植え、寄せ植え)とは、剪定したり、縛って形を整えたりして栽培した植物や奇石を盆や盎(植木鉢類)に植え、自然を縮小して表現した園芸作品のことです。唐代から五代にかけて、宮廷では庭園に樹木を植えて造景するのが流行し、花木の種類も増え、栽培技術も日増しに発展しました。宋代宮廷も文人たちも暮らしの情趣にこだわりを持ち、園芸や養石を好みました。また、花台(花壇)や湖石で庭に景色を作り、池の周りに花木を植え、栽培した植物を園林や室内に並べて、観賞用や装飾用としました。

     明代から清代にかけて、盆景の製作と観賞が大流行しました。盆景に使われる植物(樹木や花卉、観葉植物、草本類)の種類も非常に多く、鉢植え用の器も多様化しました。盆景は素材や表現様式により、「山石盆景」と「花木盆景」の2種に大別できます。盆景の風景や構想は画意が重んじられ、文人ならではの美意識が強く感じられます。また、歴代の画家らは写生の妙をもって、小さな器の中に再現された自然を描写し、花木に内在的な美を与え、芸術的な観賞価値を高めました。

  • 百卉清供─瓶花と盆景画 特別展
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  • 宋人十八学士図(琴)

    • 形式:軸
    • サイズ:173.5 x 102.9 cm

     庭園に青々とした松の木が真っ直ぐに伸びている。漢白玉石の花台に聳える湖石の間には、色とりどりの牡丹が植えられている。椅子に腰を下ろした文士が琴の音に耳を傾けようとしている。卓上に置かれた香炉からは煙が立ち上っている。机の手前にいる童僕は琴を袋から出そうとしている。ほかに羽扇を手にした童僕や、盒や瀹茗(煮茶)を手に文士の傍らに控える童僕もいる。画中には、松の木や牡丹、棕櫚、石菖蒲などの多種多様な植物のほか、盆景も描かれている。松の剪定法には画意が感じられ、棕櫚や石菖蒲のごく自然な葉の形も美しい。倣鈞窯や藍釉を施した花盆(植木鉢)、盆托(鉢の受皿)の配置にも気を配っており、長方形や円形、渣斗(痰壺、屑入れ)形、蓮の花弁形と、形状も様々である。文人たちは庭園での過ごし方や風景の美しさを重んじ、盆景(寄せ植えや鉢植え)を作って住環境の美化に努めた。画中に見える器物の並べ方や気の配りようは、日々の楽しみにもこだわった、裕福な文士らの美意識が見て取れる。画中の器具は全て明代の様式となっている。

  • 清 陳書 歳朝麗景

    • 形式:軸
    • サイズ:96.8 x 47 cm

     陳書(1660-1736)、字は南楼、号は上元弟子、晩年は南楼老人と号した。浙江秀水(現在の浙江省嘉興市)の人。雍正年間の著名な女流画家。山水画や花鳥画ともに優れ、いずれの作品にも清雅な趣がある。

     形を整えた蝋梅や椿、南天、水仙が、高さの違いをうまく生かして、天青釉の磁器の盆(植木鉢)に寄せ植えされている。盆に植えれば、花期も長くなる上、手入れも楽になり、挿花と寄せ植えの美が見事に融合している。傍らに添えられた百合の花や柿の実、霊芝、リンゴ、オリーブは、「百事如意」を象徴している。この絵は正月用の寄せ植えを写生した作品で、新年を迎えた喜びに満ち満ちている。雍正13年(1735)、晩年の作である。

  • 清 王図炳 盆梅

    • 形式:冊
    • サイズ:20.2 x 28.6 cm

     石を置いた盆景が描かれている。梅の枝は折れ曲がり、露わになった根が石を掴むように生えている。枝を縛って形を作り、長い年月をかけて栽培されたに違いない。早春にちらほらと花をつける白梅は趣深く、空間の美が感じられる。工筆重彩で描かれた花は、清らかな色遣いに高雅な趣がある。湖石には何種類もの色が使われている。海棠の花形盆は底が平らで、木座に置かれている。器壁は青と紫の釉が溶け合い、口縁の下に「鼓釘」(突起状の装飾)がある。優美な造形に鮮明な釉色が美しい。この作品は、王図炳(1668-1743)『冬景花卉詩画冊』の第六開で、第五開には乾隆帝の御製詩「盆梅詩二律」が行楷書で記されているが、いつ頃の作か記録はない。

  • 清 画院 画十二月月令図(九月)

    • 形式:軸
    • サイズ:175 x 97 cm

     園林と建築物群が青山緑水に美しく映え、皇家御園の広大な規模と、植栽された花木の豊富さがよくわかる。高所に登り菊見酒を楽しむのは、旧暦9月の重陽の節句に行われる習俗である。菊の栽培は野趣溢れる娯楽であり、季節の移り変わりを感じさせる秋の植物は見た目も好ましい。籬の傍らの露地には菊が咲き誇り、仕女や子供らが菊見を楽しんでいる。中景にも菊の花を愛でる人々が集まっている。庭園には、妍を競う色とりどりの菊に合わせて、形状の異なる磁器の盆や家具類が置かれ、目移りするほど美しい。前景に見える小舟は訪問客を岸辺まで乗せつつ、鉢植えや酒缶も運んでいる。

     月令図は伝統的な風俗画の一つで、本作は無款だが、乾隆時代の宮廷画家による合作である。

  • 清 汪承霈 画万年花甲

    • 形式:軸
    • サイズ:37.5 x 549.8 cm

     汪承霈(?-1805)、字は春農、号は時斎、浙江銭塘(現在の浙江省杭州市)の人。乾隆12年(1747)に挙人に及第。工部左侍郎、兵部尚書などを歴任し、嘉慶10年(1805)に奏請して帰郷の途についたが、故郷にたどり着く前に世を去った。詩詞をよくし、書画にも優れていた。

     乾隆49年(1784)、6度目の南巡を行った際、乾隆帝は汪承霈にこの絵を描くように命じた。全巻計24種の盆景が描かれている。陶磁器と銅製の盆盎に分けてあり、端整な着色が美しい。様式の異なる鉢植えが創意を凝らして描かれており、誰もが楽しめる作品となっている。四季の花々が同時に花開いて実を結ぶ情景は、清明な政治と、植物にまで及ぶ徳の高さを象徴している。「百花呈瑞、盛世昇平」という吉祥の意味も込められている。

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