万世師表─書画の中の孔子,会場:202、208、212,展期:2017.07.01-09.28
万世師表─書画の中の孔子,会場:202、208、212,展期:2017.07.01-09.28
万世師表─書画の中の孔子,会場:202、208、212,展期:2017.07.01-09.28
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孔子の思想と絵図

前漢以降、孔子の思想は日増しに帝王から重んじられるようになり、政府により広められた儒家の倫理や道徳観が人心に深く浸透していきました。儒家思想に基づいて君臣や父子、兄弟、夫婦、友人などの繋がりや関係が調整され、天下国家を担う士人らにとっては精神面を導く思想とされて、社会の安定に大きく貢献しました。孔子が崇敬した勇者卞荘子、採集された詩篇などに加えて、孔子の弟子にまつわる物語など、文章と合わせて見られる絵図も描かれました。

宋人 卞荘子刺虎図

  1. 形式:卷
  2. 尺寸:39 x 169.1

卞荘子は魯国(紀元前1027-紀元前250)の卞邑大夫で、1度に2頭の虎を捕らえた勇で知られる。齊国人は卞荘子を恐れて魯国を攻められなかったという。この巻に描かれた故事は『戦国策』と『史記・張儀列伝』に見られ、内容は「鷸蚌の争い」(漁夫の利)に似ている。草の上に牛の死骸があり、その牛を巡って2頭の虎が争っている。卞荘子が虎を剣で刺そうとした時、それを止めた人物がこう言った。「このまま虎同士に争わせて、1頭が死んでから生き残った1頭を刺し殺せば簡単に2頭の虎が手に入る。」巻末に剣や軸、杖、如意などを持つ人物六人が描かれている。落款はないが、細く力強さのある筆法、虎同士が戦う場面、卞荘子の勇など、いずれにも宋画の古風な味わいがあり、実に生き生きとしている。

『論語‧憲問第十四』では子路が成人(完成された人)について質問し、勇者の例として卞荘子を挙げている。子路と卞荘子は同じく卞邑出身だった。孝親武勇を尊ぶのは卞邑特有の気風なのかもしれない。

宋人 卞荘子刺虎図

元 趙孟頫 甕牖図

  1. 形式:卷
  2. 尺寸:27.1 x 100.5

趙孟頫(1254—1322)、字は子昴、号は松雪道人。詩文に優れ、唐宋代の古風な書画を復興させた。後世に大きな影響を与えた。この絵図は子貢が原憲を訪ねた場面が描かれている。門の開き戸の軸は桑の木、割れた甕を窓枠代わりとする粗末な家で、「君子は徳を楽しみとする」ことが明確に示されている。この故事は『史記・仲尼弟子列伝』に見られる。端木賜、字は子貢、衛国の人。孔子より31歳年下。商いで成功して富み、魯の宰相を務めたとも言われる。原憲、宋の人。孔子より26歳若く、貧しくとも隠居暮らしを楽しんだ。

画中の山石に皴法は使われておらず、輪郭線を描いてから青緑で着色しているのみである。衣服の線は柔らかだが力強く、唐人の古風を感じさせる。画幅の右下に千字文の「索」という文字を使った通し番号がある。巻末に項元汴による題識「明嘉靖卅年(1558)秋八月重装于天籟閣」のほか、「原価50両」と記されている。

元 趙孟頫 甕牖図