雞冠花(ケイトウ)
この花の描き方は「菊」に似ています。右側から斜めに枝が伸びており、用筆は簡潔で、水墨は力強く素朴な味わいがあります。葉と茎は右から左へと徐々に小さくなり、墨色の濃淡にも違いが見られ、空間の深度が表現されています。
雞冠花(ケイトウ)の多くは夏に花を咲かせます。沈周は庭に咲いていた、花の形が鶏冠そっくりの珍しい植物を詩に詠んだことがあります。形は鶏冠そっくりなのに鳴くことのできない花を巧みな描写で表現しており、植物や生き物を眺めて楽しんでいた沈周の風流な暮らしぶりがわかります。