華夏美術に見られる自然観─唐奨故宮文物精選特別展,展覧期間 2016年9月22日~12月22日,北部院区 105.107 会場
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季節をテーマとした作品

四季の移り変わりを季節といい、生きとし生けるものはこの規則正しい時候の変遷の中で変化を繰り返して生長します。古代の人々は春夏秋冬─四つの季節に気候の変化も取り入れて、より細かな二十四節気を定めました。それに農民暦(旧暦)を組み合わせて、春の耕作、夏の除草、秋の収穫、冬の貯蔵─四つの農事の参考としました。人々は季節の移り変わりを通して、その季節に合った服装や飲食は身体によく、長寿にも繋がることを実感しました。芸術上の表現では、春のせせらぎや夏の入道雲、秋の月、冬の山々などの四つの風景のほか、梅や蘭の花、竹、菊など、四季折々の植物を題材にし、こなれたタッチで特色豊かに季節が表現されました。宮廷画家たちは古い書物に登場する草花や昆虫、鳥類をまとめ、大自然の生物の特徴を表現しました。それによって帝王による治国を喚起しただけでなく、時候に合わせた行事など、国家の永続的な発展と安泰への願いも込められていました。

御筆詩経図

  1. 清 高宗弘曆書
  2. 清乾隆間御筆写本
  3. 外枠サイズ:30.2x39.6 cm
  4. 書冊サイズ:43.5x43 cm

『御筆詩経図』は正式名称を『御筆詩経全図書画合璧』という。乾隆帝が真、草、篆、隷─4種の書体で書いた『詩経』311篇に加えて、宮廷画家に模写させた南宋の画家馬和之の「詩経図」も収録されている。水墨による絵図が配され、筆墨の合間に人と自然の関わりが見て取れる。

中華圏で最も早い時代に編纂された詩歌集『詩経』には、西周から春秋時代中葉にかけて、民間や宗廟祭祀で詠じられた詩歌が収録されており、花卉や動植物、節気などの自然現象を通して、男女の情感や素朴な人生哲学が述べられている。孔子はこれを「思無邪」(思いに邪なところがない)と讃えた。『詩経』の詩文には修身、斉家、治国、天下泰平などの重要な原則が含まれている。

御筆詩経図

清 汪承霈 春祺集錦 卷

  1. 42x778.8 cm
  2. 紙本着色

汪承霈(?-1805)、字は春農、浙江銭塘(現在の浙江省杭州市)の人。本籍は安徽休寧(現在の安徽省休寧県)。乾隆帝に重んじられた詞臣汪由敦(1692-1758)の子息。乾隆12年(1747)に郷試に合格し、書画をもって内廷に仕え、花卉を題材とした作品を多数描いた。この作品には、冬の終わりから春の初めにかけて咲く梅と水仙、夏に盛りとなる蓮、秋の菊など、40種を超える花々が描かれている。四時の花々が一巻に収められており、絶えず巡る四季や植物の生命力が表現されている。交錯する枝の合間の余白は観賞者が花を眺めつつ詩を書き入れられるように残されたものであろう。全巻を通して秀麗細緻な画法が見られ、着色も清く鮮やかで、この種の花卉長巻の佳作だと言える。

春祺集錦

清前期 三松款 
雕竹荷葉式水盛

  1. 長さ15.3 cm 幅7.9 cm 高さ6.4 cm

竹の根を蓮の葉形に彫刻した水盛。くるりと丸まった葉の縁に虫食いの跡がある。葉の上に小さなカニがいて、その傍らに満開の蓮の花がある。曲がった花の茎と葉の柄が底になっている。葉の外側に「三松製」という行書の刻款がある。「三松」とは朱三松のことで、明代末期に竹彫刻で知られた一族「嘉定三朱」の筆頭である。この彫刻にも優れた技巧が見られ、葉脈や花弁はもちろんのこと、蓮蓬に至るまで丹念に描写され、正しく「舒卷開合任天真」(李商隠の詩、蓮の葉や花が自然に開いたり閉じたりしている様子)の情態が表現されており、作家が花や葉をつぶさに観察したことがよくわかる。「此花此葉長相映、翠減紅衰愁煞人。」(互いに美しく映える花と葉が散り落ちしおれるのは実に残念なことだ。)という二句の詩意が彫刻で表されている。夏を迎えた蓮池の一角にそよ風が吹く─そんな一時を感じさせる作品である。

雕竹荷葉式水盛