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鏡を使う楽しさ─鏡のある暮らし

清代の鋳鏡業も発達していましたが、宮廷の皇族たちは秀麗で典雅な趣のある漢代や唐代の古銅鏡を愛用していました。古鏡を様々な鏡台に合わせたほか、素材や機能にも変化を加え、硯を唐鏡の菱花形に作り、書斎机に飾ってその美しさや情趣を楽しみました。

康熙時代、西洋から来た宣教師が欧州のガラス製鏡や鏡用ケースを貴重な贈物として献上し、皇帝にことのほか喜ばれました。1696年、康熙帝は「玻璃廠」を開設し、2千年を越える銅鏡鋳造の伝統に別れを告げ、ガラス製の鏡を含むガラス製品の生産に力を入れました。清宮廷の「造辦処」でも玉や銅、木材、動物の牙や骨、琺瑯画など、ガラス製鏡に合わせる鏡匣が多種多様な素材で制作され、清宮廷独特の美意識の感じられる西洋風の鏡が多数開発されました。

英国 18世紀 鐘錶化粧匣

英国 18世紀 鐘錶化粧匣

長さ6.3cm 幅8.9cm 高さ10cm

ジェームス・コックス(James Cox)制作の多機能な化粧匣。持ち手付きで二層になっている。全体に金属を用いた花葉の模様で飾られ、メノウがはめ込んである。持ち手と脚も色とりどりの宝石で飾られている。一層目のふたを開けると宝石をあしらった時計が現れる。中にある時計の装置は動かすことができる。ふたの裏はガラス製の鏡になっている。二層目は化粧品入れで、ガラスと金属で飾られたふた付きの小物入れと道具類が入っている。二層目のふたの裏に西洋のドレスを着た中国人女性の絵があることから、中国市場向けに制作されたものだとわかる。