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装匣陳設─銅鏡の収納箱

乾隆帝は内府所蔵の古銅鏡を「西清四鑑」という図譜にまとめさせました。その後、「西清古鑑」、「寧寿鑑古」、「西清続鑑」、「西清続鑑‧乙編」、「寧寿続鑑」という書籍型の鏡匣(鏡用化粧箱)5冊を制作させました。各冊におよそ50種の匣が収納されており、紫禁城内の「位育齋」、「寧寿花園」の「符望閣」、「盛京奉天行宮」などの宮殿で装飾品として陳列されました。鏡匣はどれも豪華で美しい装禎となっています。表紙と裏表紙の木板には龍紋が施された二色の錦が貼ってあり、木製匣の四方に紙を貼って書籍型に作られています。内側には天青色の綾が貼ってあり、表紙の裏にはその匣に収納される銅鏡の写し絵があるほか、鏡の名前や状態などを記した黄籤も付されています。裏表紙の内側には山水や花卉が描かれています。銅鏡を匣に入れてから柔らかな黄綾の覆いをかけ、それから見事な彫刻が施された木製の蓋をします。裏表紙の内側と木製台座の裏に付された画作と書法は乾隆帝と同姓の兄弟や皇子、文臣、画工などの手によるもので、君臣間の密接な関係もうかがわれます。

清 乾隆 「西清続鑑‧乙編‧第一冊」鏡匣

清 乾隆 「西清続鑑‧乙編‧第一冊」鏡匣

長さ44.5cm 幅31.1cm 高さ5cm

彫刻木蓋付き梁国治行書臨欧陽詢「化度寺碑」

直径21.5cm

匣(収納箱)には銅鏡一面のほか、品鑑目録冊頁一開も収められている。目録所収の「上上等」の銅鏡四面は鏡匣第一冊に一面、第二冊に三面が収められている。匣の内側には永瑢作の青緑山水画と題がある。高々と聳え立つ連山や雲霧に見え隠れする楼閣、山間の松や岩石、流れ落ちる滝、川岸に鬱蒼と茂る樹木など、幽遠な雰囲気漂う風景は宋元人の筆意が感じられる。円形の窓から見える風景画は宋人の小景山水の味わいがある。これもまた格別の眺めとなっており、構図にも工夫が凝らされている。木製のふたには錦の地にコウモリと磬(打楽器の一種)が彫刻されている。これは同音の語呂合わせで「福」と「慶」を表している。その裏に梁国治(1723–1786)の行書─欧陽詢の臨書「化度寺碑」がある。梁国治、字は階平、浙江会稽(現在の浙江省紹興市)の人。乾隆13年に進士に及第。官は戸部尚書に至った。乾隆時代晩期の重要な詞臣の一人で、書法にも優れていた。ふたに付された書の秀麗かつ端正な書風、本院所蔵の梁国治による臨書「蘭亭序」からは、その書の源淵がうかがえるだけでなく、清代初頭に重んじられた帖学の伝統を継承していたこともわかる。