宋 范寛 臨流独坐図
画家の款印はないが、清代の記録では范寛(950頃-1031の間)が作者とされている。
大作の中央に堂々と聳え立つ主峰。その造型もまた雄壮さを感じさせる。山頂には樹木が生い茂っている。構図は明らかに范寛の「谿山行旅図」を継承したものだが、岩石の描き方だけは異なり、「雨点皴」ではなく、側鋒を用いて斧でかち割るような筆法に変えられている。更にそこが墨でぼかされており、「小斧劈皴」の概念がすでに備わっているのが見て取れる。川の流れに向かって独座する人物は簡略化されており、「谿山行旅図」に見えるロバの隊列ともイメージが異なる。以上の点を考慮すると、「臨流独坐」の制作年代は南北宋の間の李唐(1049-1130以降)により近い時代だと推測される。