展示概要

明 丁雲鵬 白描応真

• 形式：卷
• サイズ：33.8 x 663.7cm

丁雲鵬（1547或いは1548-1629以降）、字は南羽、安徽休寧（現在の安徽省休寧県）の人。明代晩期に活動した仏道人物画の名家。

この絵の羅漢は宋代の李公麟の系統を模倣したもので、線は滑らかで筆力も安定している。画中の人物は様々なポーズで描かれており、机や椅子などの家具や装飾も非常に多い。亀の尾を掴まえている子供は、花瓶の中を泳ぐ小さな亀の伏線のようにも思え、面白味がある。

宋哲宗坐像

• 形式：軸
• サイズ：179.7 x 144.7cm

この像の大部分は現存する宋代帝王像軸に似ている。帝王の肖像画は、丸衿の赤い衣を身に纏い、黒い紗の幞頭をかぶって朝履をはき、椅子の背にもたれる姿が側面から描かれている。だが、哲宗像はその中で最も精麗な肖像画だと言える。衿口と袖口からは、黄色い花模様の中に、おそらく真珠を縫い付けた白地に金色の縁飾りの装飾がのぞいている。花の間を縫うように進む龍の模様のある足置きも真珠で埋め尽くされている。黄色い座面や背もたれにもそれらとは別の精緻な龍や花の模様が金糸で表現されている。この豪華さは尋常ではないが、誇示するような感はなく、贅を尽くしてはいるが、宋代宮廷の慎みのある美意識が反映されている。

明熹宗坐像

• 形式：軸
• サイズ：203.6 x 156.9cm

この像はその他後期の明代帝王像軸に似ている。翼善冠をかぶり、龍袞服を着た皇帝が正面を向いて宝座に腰掛けており、背後には大型の屏風が置いてある。熹宗像は数ある肖像画の中で最も豪奢な調度品が配された作品だと言えよう。基本的な調度のほか、玉彫龍紋宝座の傍らに置かれた赤漆金彩高几、その上にある香炉や花を生けた瓶、画冊と巻軸、座面に置かれた肘掛用の繡墩、床に敷かれた絨毯など、いずれも極めて華やかで、鮮麗精緻な装飾が施されている。色どりも鮮やかで豪華絢爛な背景と袍服が、明朝の繁栄と帝王の威厳を示している。

_伝 宋 李唐 煙嵐蕭寺

• 形式：軸
• サイズ：50.8 x 49.5cm

詩塘にある清初の人物が記した題跋によれば、この絵の端には李唐（1049頃-1130頃、一説には1070頃-1150頃以降）の題款があったが、表装の際に職人がうっかり切り取ってしまったという。しかし、この作品と本院所蔵の李唐「万壑松風」の筆墨や皴法、山石の造形などはあまり似ておらず、李唐作とは考えられない。しかし、山石や建物、雲霧が交錯する空間は非常に丁寧に描かれており、流れ下るせせらぎが一段ごとに枝分かれしていく様が生き生きと描写されている。おそらく南北宋が交わる頃に描かれた山水画であろう。

_伝 元人 龍舟奪標図

• 形式：卷
• サイズ：29.5 x 359cm

かつては元人作とされていた。墨線で描かれた山上の宮殿が画面の中心となっており、各種各様の装束を着た、様々な姿態の人物がその中で生活している。小さな建物内で身だしなみを整える宮女や、儀仗衛兵の楽隊、弓の訓練をする官兵の様子など、元代の白描界画の伝統が受け継がれている。特に巻末が王振鵬の「龍池競渡」によく似ているが、山石と一部建築物の部分が着色されている点は異なっている。この作品の山石と樹木には、明代蘇州に流行した画法が見られることから、明人が元代の作を模倣して描いた佳作だと思われる。

明 董其昌 倣燕文貴筆意

• 形式：軸
• サイズ：107.3 x 45.1cm

董其昌（1555-1636）、字は玄宰、号は思白、松江人など。絵画史において伝統を覆した天才画家。

天啓2年（1622）、北宋の燕文貴（967-1044）の画巻を見た董其昌はそれに倣ってこの絵を描いたが、形式は立軸に変えられている。姿の美しい木々が斜面に生えており、中景には遠山が大胆に移し置かれている。画幅上部の遠景には、視覚的な比率から言えば観る者に近い中景の斜面と樹木、山石が現れている。全体の筆墨に秀麗な味わいがあり、平淡なようで大胆かつ特異な構図となっている。伝世の佳作である。

_伝 宋 劉松年 蚕事図

• 形式：冊頁
• サイズ：31.6 x 54.6cm

南宋の劉松年（1150頃-1225以降）作と伝えられるが、劉松年の伝世作品とは異なっている。本院所蔵の元人「四孝図」に近い。現在は冊頁となっているが、両側に繋がる画面があったと思われ、おそらく破れてしまったために、冊頁に仕立て直したのだろう。画中の人物や家屋、かまど、炕蓆（寝台）、食器類など、細部まで丁寧に描かれているわけではないが、その形状が数筆で適確に表現されている。人物の表情も豊かで、母親の膝にもたれる少女が糸巻きを眺めている姿などは、とても愛らしい。

明 周臣 漁邨図

• 形式：卷
• サイズ：20.9 x 183.9cm

周臣（15世紀末～16世紀初頭）、字は舜卿、号は東邨、蘇州（現在の江蘇省蘇州市）の人。山水画と人物画をよくし、唐寅と仇英に師事した。才能豊かな職業画家。

この作品には漁師の日常生活が描かれている。漁師の一人は川岸に停泊する舟に寝そべり、のんびりと読書を楽しんでいる。何隻かの舟が集まり、酒を飲みながら楽しげに騒いでいる。子供に何かを食べさせている母親もいれば、カワウを連れて漁をしている者たちもいる。全体の用筆は謹厳に整い、淡い着色には趣があり、丹念な筆致で生き生きと描写されている。