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宮廷芸術

嘉慶時代の宮廷芸術は、乾隆朝の書画と器物の作風を継承する一方で、宮中文物の鑑定と整理を継続し、ついには清朝皇室の文物収蔵品を芸術コレクションとして大成させました。嘉慶朝の文物製作とその数は保守的だったように見られますが、実は帝王自身は愛玩鑑賞を自制すべきとの嘉慶帝の考えを反映したものでした。その質朴で簡素な風格は、宮廷芸術と君主の治世の表裏一体を体現し、それはまた人々の豊かで平和な生活を求める民本志向の現れでもありました。

白玉鳳首壷

白玉鳳首壷

  1. 清 嘉慶年間
白玉を素材とし、表面は無地で装飾文様はない。注ぎ口は鳳凰の首に象られ、取っ手は如意を模し、蓋のつまみに満開の牡丹をあしらっている。高台の内側に「嘉慶御用」の款が隷書体で刻まれている。鳳凰や牡丹、如意などは吉祥と富貴を象徴し、無地の胴部は白玉の温潤な質感を伝えている。この壷は極めて希少な嘉慶御用器であり、デザインは簡素ながら落ち着いた趣がある。これとは別に北京故宮にも「嘉慶御用」款の入った白玉羊首提梁壷(上手型の壷)が収蔵されている。嘉慶御製詩集には茶に関する詩が多く収められていることから、嘉慶帝は茶器類を重視していたとも考えられる。
御製詩碧玉三鑲如意

御製詩碧玉三鑲如意

  1. 清 嘉慶年間
嘉慶「御製詩集」の中には「詠玉如意」詩が収められている。これは毎年旧正月、嘉慶帝が来る新しい一年が何事も順調であるよう祈って詠んだ詩である。嘉慶五年~七年(1800-1802)は先帝逝去のため喪に服し、その間の三年は詠まなかったものの、乾隆三十六年(1771)に始めて以来の慣例となっていた。碧玉で作られたこの三鑲如意は、如意の首、腹、尾の部分にそれぞれ浮彫の白玉が象嵌されている。首の部分には南天竹と蝶、腹部には菊花、尾には万年青を象った白玉がはめ込まれ、どれも長寿を願う意味が込められている。柄の上段には金を埋め込んだ陰刻隷書体の「御製」の文字があり、下段には嘉慶九年(1804)の「詠玉如意」御製詩「指揮欣應手 磨琢喜從心」の二句が刻まれている。丸みのあるすっきりとしたつくりと上品な配色が簡素な美しさを伝えている。
御製万春集慶五色画錠

御製万春集慶五色画錠

  1. 清 嘉慶年間
嘉慶己巳年(十四年、1809)製作。画錠(絵墨)は白、石青、辰砂、石緑、石黄の五色で十点一組になっており、金の双龍が描かれた螺鈿装飾の黒漆箱「御題万春集慶冊五色画錠」に収められている。画錠は嘉慶壬戌(七年、1802)、嘉慶帝が題詩を書した董誥の〈万春集慶〉冊(本院所蔵)を題材としている。同作は「万戸春声」から始まり、「万」及び「春」を題名とした十開の着色山水画から成り、各開に嘉慶帝の御題詩が添えられている。絵墨は片面に金を埋めた楷書の御題詩、もう片面には作品のポイントを新たに構成し直した董誥の絵画が緻密に模刻されており、絶妙な案配は嘉慶時代の製墨工芸を代表するものである。
清 黃鉞 画龢豊協象

清 黃鉞 画龢豊協象

  1. 紙本 着色
  2. 縦 26.5 cm
  3. 横 36.2 cm
黄鉞(1750-1841)、字は左田、安徽当塗の人。乾隆五十五年(1790)の進士。嘉慶帝の親政後、師である朱珪(1731-1806)に推挙され重用された。黄鉞は書画にも長じ、作品はたびたび御題を賜るほど皇帝に気に入られていたほか、皇帝の命により宮中書画の精選目録「秘殿珠林」、「石渠宝笈」三篇の編纂にも携わった。この画帖は主に年末年始の各種習わしが描かれ、簡潔な筆遣いの中に意を尽くしており、どこか漫画のような趣も感じさせる。黄鉞が嘉慶十六年(1811)の旧正月に合わせて描いた作品と思われ、どの開にも嘉慶帝の題詩がある。
清 董誥 画綺序舒芳

清 董誥 画綺序舒芳

  1. 嘉慶三年
  2. 紙本 着色
  3. 縦 14.2 cm
  4. 横 28.8 cm
董誥(1740-1818)、浙江富陽の人。乾隆朝の重要な詞臣画家であった董邦達(1699-1769)の子。乾隆二十八年(1763)の進士で、嘉慶年間には大学士に至った。家学を継承した董誥は詩文と書画の双方に長じ、その作品は乾隆、嘉慶の両朝で高く評価され、内廷にも相当数が収蔵されていた。この二十四開の画帖には、時節に合わせたかのような四季の花々が描かれ、色使いは清らかで美しく、枝葉や花びらの一部にパターン化された表現が用いられ、つたない趣にあふれている。嘉慶帝はその端正な書法によりすべての作品に題詩を寄せ、最後の開では「春長共沐長春澤、長祝春暉億萬斯」と先帝の恵みに感謝し、長寿を祈っている(乾隆帝はまたの号を長春居士)。